「ST」は紙名を新たに「Alpha」として2018年6月29日より新創刊しました。 Alpha以降の全訳はこちら
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2016年1月1日&8日合併号掲載の記事(ST編集部訳) print 印刷用に全て表示
Essay

The Land of Nod (p. 9)

眠りの国

先週のある朝のこと、私は職場から閉めだされたように見えた。戸惑って、再度カギを開けようとし、そのときになってようやく誰か違う人の名前がドアに書かれているのに気づいた。逃げる間もなく突然ドアが開いた。驚いている同僚に謝った。違う職場の外にいただけではなく、違う階の違う通路にいたのだった!

これを、私は睡眠不足のせいにした。赤ちゃんの息子が離乳を始めていて、夜のシフトを担当するのは今度は私の番。英語の表現「赤ちゃんのように眠る(=ぐっすり眠る)」は厳密には正しい。赤ちゃんは実に深く眠る。適切なタイミングで眠りさえしてくれればいいのだが。

職場で迷子になった朝の前の晩、私は6時間の睡眠はとっていたはずだ。唯一の問題は、赤ちゃんにミルクをあげて心地よくさせる時間と眠る時間とで、眠りが断片的だったことだ。

不眠は年をとるにつれて対処できるようになる症状ではあるが、それでも眠りの国に向かったら最低でも邪魔されないで7時間はほしい。私は後から、こんな大きな建物で働いているんだから職場で迷子になりやすいのだと自分を慰めた。

私が働いている病院の同一の廊下全てに沿って、睡眠の重要性についての役立つものも含め、健康へのポジティブなメッセージがある。「8時間の睡眠をとって、残りの16時間が楽に過ごしましょう」とあるポスターには書かれている。

しかし、私の上司は、一晩に4時間の睡眠でどうにかやっていけると言う。これはおおげさではない。ときどき、彼女は午前1時以降まで私のEメールに返事をする時間がとれないこともある。彼女は、長時間(の労働)と疲労がここアイルランドで実際問題になっている医師ではないと、ここで強調しなければならない。誤った腎臓の手術をしたとか、カルテを逆さまに読んだとかいう医師の怖い話を聞くとき、疲労がどれだけ関係していたのだろうと思うだろう。

イギリスの元首相マーガレット・サッチャーのような人々が、必要なのはたった4時間の睡眠で十分だと言うのはいい。しかし、私はデカルトの例のほうが好きだ。デカルトは歴史上最も偉大な思想家で大変よく眠った人の一人だ。この現代数学の創設者(デカルトのこと)は、正午よりも早く起きないことをよしとした。

日本人についてはよくわからない。他方、彼らは世界で最高のワーカホリックという面もあるが、眠ることにかけては金メダリストでもある―地下鉄だけではなくレストランでも眠る。

私の日本人の上司が、実際、職場にベッドを持っていることをかつて知ったときには驚いた。もし私の雇用主が睡眠の健康への恩恵について真剣なら、この日本の解決策を勘案して、職場でぐっすり昼寝させてくれるだろうと思っている。

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