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2016年6月3日号掲載の記事(ST編集部訳) print 印刷用に全て表示
Essay

Learning to love myselfie (p. 9)

自分自身のセルフィーを好きになる

最近、地元のショッピングセンターで周囲に注意を払わずに歩いていたら、チラシをしきりに眼前に突き出された。見えたものから判断するに、そのチラシは美容整形外科のボトックスの広告だった。チラシを持っていけば、初回の治療費から1000円引きになる(そして、おまけになめらかでシワのない額も得られるという)。

それまで自分の額の見え方を考えたことがなかったが、家に帰って気づけば、眉を上下に動かして鏡で自分の顔をものすごく詳細に観察していた―確かに、シワができ始めているのが見えた。「ボトックスを受けた方がいいのかも」と私は思った。

セルフィーで頭がいっぱいの現在の社会では、間違いなく、美容整形手術はビッグビジネスだ。美容目的の処置は過去10年間で増加しており、現在、世界で2兆2000億ドル(239兆円)規模の産業となっていると報告されている。この数値は2017年までに2兆9000億ドル(316兆円)以上に達するだろうと予想されている。

イギリスでは、毎年約65000人の人が美容整形手術を受ける。その処置は、鼻形成術(「鼻の美容整形」と一般に呼ばれている)のような大掛かりな外科手術から、ボトックス注射のような外科手術を伴わない治療まである。

美容整形手術はかつてよりも値段が手頃になり、身近になっている。かつて美容整形手術は裕福なセレブの領域のものだったが、それほど高級でない美容サロンでも広く受けられるようになった。今日では、ちょっとした修正を受けるのは安価で簡単になった。その結果、ますます多くの一般の人々が、美容整形手術のはやりに便乗している。このことは特に、若い人に当てはまる。実際、ミレニアム世代の人々は現在、美容整形手術の市場で急速に成長している層だ。

さらに、美容整形は、もはやタブーではなくなった。「(顔を)いじる」という考えは今や恥ずかしいことではない。昼休み中や、重要なイベントの前にボトックスを受けることはかなり普通なのだ。実は、メスを入れる(あるいは針を入れる)ことは、名誉なこととさえ見られている。ソーシャルメディア上のアカウントに、手術後のセルフィーを投稿するかなりの人を目にしてきた。事実、アメリカの最近の調査によると、患者がセルフィーで見栄えがよくなるように美容整形手術を受けることを決めていることを、5人に2人の美容整形外科医が報告しているという。

メディアに掲載されるフォトショップのソフトで改変された画像のせいで、人々は自分の見た目を変えなければならないというプレッシャーを感じている。日常的に、私たちには、自分が十分に良くはない、もっとやせるべきだ、あれやこれやを変えるべきだというメッセージが殺到している。非難を受けるリスクをとることなく、店を歩くことさえできないのだ!

美容整形手術は、コストがかからず、便利かもしれないが、自尊心は内側からわいてくるというのが真実だ。だから私は、自分の額をそのまま受け入れることに決めた。チラシはごみ箱に入っている。

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