たばこを吸うシンガポールの友人たちは、日本でたばこを吸うのが好きだ。タバコが安いからだけではなく(シンガポールではタバコが1パック約13シンガポールドル、日本円にして1,000円ほどする)、日本には選択肢がもっとあるからでもない。タバコを吸う友人が最も切望するのは、快適な喫煙環境か、あるいは最低でも喫煙室だ。
シンガポールで1970年に初めて禁煙が導入されて以来、国家環境庁は駐車場から居住用の建物の階段の吹き抜け、ショッピングモールやコンベンションホールに至るまで、無数の場所が含まれる禁煙場所の膨大なリストをどんどん長くしている。
今年3月、政府は喫煙をやめさせる別の一歩を進めた。店ではタバコ製品を陳列することが禁止され、小売店では、どのタバコ製品が販売されているかを客に知らせる文字だけの価格表を使わなければならなくなった。
オーストラリアやフランス、イギリスのような国々では、消費者の需要を減らすために、タバコ製品のプレーン・パッケージングも導入された。
実は、5月31日の世界禁煙デーを記念するために、世界保健機関はプレーン・パッケージングのガイドを発行し、この措置に関する最新の証拠と導入の指針を示した。
プレーン・パッケージング(標準化されたパッケージングとも呼ばれる)は、定められた色とフォントによるブランドと商品名以外のロゴや色、ブランドイメージ、販売促進につながる情報の使用を規制、または禁止するものだ。シンガポールのパッケージは、パッケージングにブランドを示しているが、タバコが身体に与え得る害について生々しい画像もついている。
世界保健機関の事務局長で医師のマーガレット・チャン氏は、最近のニュースリリースで「プレーン・パッケージングはタバコ製品の魅力を減じさせる。華やかさをなくす。人を惑わすパッケージとラベルに制限をかけている。また、健康上の警告の効果を高める」と述べている。
オーストラリアはこの分野で成功している。2012年12月から2015年9月までの間に、14歳以上の喫煙の普及率が0.55%ポイント下がった―この期間に、喫煙を止めた、または(喫煙者に)逆戻りしなかった、あるいは喫煙を始めなかった人は108,000人以上いたということになる。
プレーン・パッケージングは効果的だと思うかを喫煙者の友人に尋ねてみた。ほとんどが懐疑的だった。禁煙場所の増加と積極的な法規制の方が抑止力になると感じるそうだ。しかし、数人はタバコのパッケージの生々しい画像は確かに興味をなくさせると話していた。
日本ではシンガポールよりもずっと多くの喫煙者を見かけるので、プレーン・パッケージングは目的を達成するのではないかと思う。私はノンスモーカーだが、それでも日本のタバコの美しさに引きつけられたことがある。実際に買って吸うところまでは行かなかったが。年季の入った喫煙者がその習慣をやめるためにはプレーン・パッケージングでは十分ではないかもしれないが、少なくとも感受性の高い若者にとっては、プレーン・パッケージングを採用することは、実際にタバコを吸わなくなる第一歩となるかもしれない。