私の息子が1980年代後半に東京の保育園に通っていたとき、妻が道で立ち止まり、息子のクラスメイトのりゅうくんに挨拶をした。するとすぐに警察の車が止まり、警察官がこの背の高いアメリカ人女性に、どのようにしてこの子どもを知ったのか、この子どもの名字は何と言うのかと尋ねた。妻が答えられたのは、りゅうくんの母親を保育園で知ったということだけだった。警察は外国人登録証を確認した後、妻は去ることが許されたが、どちらにとっても怖い体験だった。
この時期は、1988年から1989年にかけて4歳から7歳の女児4人を殺害した宮崎勤を警察が捜査していた頃だった。宮崎は亡くなった祖父の遺灰を食べるなど、困った行動をする問題を抱えた男だった。
女児殺害は防ぐことができただろうか? それに対する1つの答えは、アメリカにあるかもしれない。われわれがアンバーアラート制度と呼ぶものに。
正式には、アンバー(Amber)はAmerica's Missing: Broadcasting Emergency Responseの略だが、本当は1996年に誘拐されて殺害された9歳のテキサス州の女児アンバー・ハーガーマンさんにちなんで名付けられた。彼女の悲劇的な死は、50州全てとカナダで現在運用されている警報システムができるきっかけになった。
カナダの警察は、FBIと共に、アンバーアラートネットワークにも協力している。
アンバーアラートは、テレビや大手ソーシャルメディアサイトに表示され、放送を遮って行方不明の子どもの詳細―写真、年齡、氏名、服装―を伝え、できる場合には誘拐犯の特徴と運転している車の特徴をナンバープレートとともに表示する。
この方法は効果があるだろうか? アメリカ法務省によると、拉致被害者の75%が誘拐後3時間以内に殺害されているという。しかし、2016年8月現在、このプログラムが始まってから830件で身柄を取り戻すことに成功している。
最近も成功例が1件ある。モンタナ州で2月に、5歳の子どもが庭で男に誘拐され、男は走り去った。当局はアンバーアラートを発動し、人々が情報を電話で提供した。こうした情報を基に、当局は男を捕まえ、男は警察に誘拐された子どもの居場所を話した。子どもは無事に救助された。
このケースでも、ほかの多くのケースでも、関心の高い市民や近所の人々のアンバーアラート・ネットワークの力で子どもたちが発見されている。
アメリカとカナダでは、アンバーアラートに厳格なガイドラインがあり、情報は本当にまじめなものでなければならない―いたずらや、嘘つき、家出した子どもや親権争いではないことを確実にしなければならない。
オーストラリアのクイーンズランド州や、ヨーロッパの多くの国々など、他の多くの国でも、このシステムに参加している。
日本ではしかし、見かける警報は地震と津波だけだ。おそらく、日本版のアンバーアラートシステムをそろそろ検討した方がいい時期に来ている。