「わあ! これ、久々に見たよ!」
一緒にしゃべっていた若い友人が、私のかばんの中に入っていたMP3プレイヤーを見て思わず叫んだ。
多くの若者と同じように、彼女はスマートフォンで音楽を聴いている。彼女はまた、スポティファイやYouTubeミュージックといったストリーミングサービスを利用している。彼女が最後にMP3プレイヤーを使った、あるいは見たのは、何年も前だという。
私が明かさなかったこと、そして、恐らく彼女をさらに驚かせることになったかもしれないことは、私のMP3がかなり新しいものだということだった。わずか数ヵ月前に大阪で買ったものだった。
私の信頼する古いMP3プレイヤーは7年近く調子よく動いた。その間に携帯電話は数回変更したが、MP3プレイヤーは、良い時も悪い時も私と一緒にいてくれて、私はその間にシンガポールから日本へ移り、その後、またシンガポールに戻ってきている。
数ヵ月前、頻繁に動かなくなるようになった。しかし、私はそれを捨てるのは気が進まなかった。長いハイキング、電車や飛行機に長時間乗っていたとき、旅行の際に、自分の音楽の世界に接続したのを懐かしく思い出す。このMP3プレイヤーを持ってまた休みの旅行に行くのが楽しみだった。どこへ行くにもお気に入りの音楽とプレイリストの一式がちょっとあると心地良いものだ。
私のプレイヤーがついに力尽き、もう復活しなかったとき、私は替わりの物を探さなければならなくなった。残念ながら、私のその古い機器を製造したシンガポールのブランドはMP3プレイヤーそのものの販売を停止してしまっていた。いくつかの電化製品店を訪ねたが、どこにも在庫がなかった。販売員にMP3プレイヤーのことを尋ねると、ほとんどが驚きを隠せず、いぶかしげな表情を見せた。少し気恥ずかしかった。
スマートフォンでも音楽が聴けることは知っているが、そうしたくない。携帯電話の電池を消耗するだけでなく、携帯電話にもっと依存するようになってしまう。音楽プレイヤーを分けておく方が、携帯電話を持たずに出かけやすくなり、電話やメッセージ、ソーシャルメディアから離れた状態を楽しむことができる。
それで、日本に最近旅行へ行ったときに、大型電化製品店に行った。MP3プレイヤーを目にしたときには、明らかな安心感を覚えた。選べるモデルが多くないことは気にならなかった。きれいな色の種類も多様な機能も必要ない。私が必要としていたのは、音楽を保存でき、再生できるシンプルで余計なものがないプレイヤーだった。
4000円以下でプレイヤーを買い、それからずっと、熱心に使っている。いつかMP3プレイヤーそのものの製造をメーカーが止めてしまう日が来るかもしれないと思うので、このプレイヤーが長持ちしてくれることを中指と人差し指だけでなく足の指まで交差させて祈ろう。あるいはもしかすると、音楽を再生する以外にできることはほとんどない音楽プレイヤーを持つ利点を受け入れ始める人が増えるだろうか?