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2017年2月10日号掲載の記事(ST編集部訳) print 印刷用に全て表示
Essay

Happy learning! (p. 9)

ハッピー・ラーニング!

「学校の成績が上がりますように!」

毎年の旧正月(シンガポールでは今年1月28日から2月11日まで祝う)には、これがシンガポールで最もよく聞かれる学生たちに向けて幸運を祈る言葉の一つだ。学校に通う年齢の家族に夫婦が赤い小袋(お年玉と似たもの)を手渡すとき、彼らはよく「学业进步!」と言う。「学业」は学校の成績、「进步」は向上という意味だ。

多くのアジアの国々と同じように、シンガポールの親たちは学校の成績を早い段階からとても重視する。幼児の多くが、講師が何を言っているのかほとんど分からないとしても、「頭脳向上」コースへ送り込まれる。もう少し年齢が上がった子どもたちは、語学の強化、スピーチ、演劇のレッスンを受ける。

親の中には、子どもにもっと自由な時間を持たせたい人もいる。しかし、こうした子どもたちはクラスでは浮いてしまうかもしれない。友人が私に、彼女の娘がクラスメート全員が何らかのレッスンに通っていて、仲間外れになったように感じるから、塾に行かせてほしいと頼んできたと語った。別の友人は、彼女の息子の先生が、クラスメート全員が学校外で進んだ勉強をしていて、落ちこぼれになるかもしれないから、数学の強化クラスに行かせた方がよいとアドバイスしてきたことに腹を立てていた。

「これって悪循環を作っていない?」と彼女は問いかけた。「みんなもっと難しいことを勉強しているからみんなイライラしていて、しまいには教師がハードルを上げている」。

シンガポールの子どもたちが国際的な学力テストで好成績を収める理由はこれが一因ではないだろうか。11月に発表された世界の学力水準調査で、シンガポールの学生が数学と理科で世界一らしいことが示された。シンガポールの小学4年生(普通は9歳と10歳)と中学校2年生(13歳と14歳)は、世界中の政策担当者や教育関係者に広く認められている学力テストの国際数学・理科教育調査で両教科とも1位となった。

この結果はメディアで広く議論を呼んだ。こんなに優れた結果にもかかわらず、シンガポールはなぜトップクラスの起業家や思想家を輩出していないのか、と問う人もいた。他には、テストで成績がよいからといって、イノベーションや根性といったその他の重要な資質があるということにはならないと言う人もいた。

この試験の結果が何を意味していようとも、もっと重要なことはきっと、私たちが自分の子どもたちに何を望むかだろう。私たちは子どもたちの価値を学校の成績で測りたいのだろうか? それとも、一歩離れて見て、子どもにとって何が本当に大事かを考える気があるだろうか? もちろん、自分がすることでベストを尽くそうとすることは大事だが、ベストを尽くそうとしたのに成績が悪かったら、それは失敗したということになるのだろうか?

そこで、今年の旧正月は姪やおい、いとこに赤い小袋を渡すときに、「学业进步!」とは言わないつもりだ。代わりに「开心学习!(ハッピーラーニング!)」、そして「笑口常开!(いつでも笑みを!)」と言おうと思う。

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