ザ・ドアーズ(バンド名)のジム・モリソンが歌ったように、「道路から目をそらすな、ハンドルから手を離すな」というのは、今日ではますます現実味を増している。
ワシントン州の小さな市で今暮らしていて、妻と私は、スピード違反や前の車にぴったり付けて走ること、わき見運転は、私たちが子ども時代、アメリカで育ったころに覚えているよりも増えていることに気がついた。その主たる理由は、携帯端末が要因のわき見運転のせいだ。
私たちの州では、運転時に全ての携帯端末の使用を禁止する法律を可決しようとしている。暫定的に「電子機器を使用しての運転に関する法律」と呼ばれている。4月の最初の2週間に、わき見運転者を調べる追加の6,000時間の取り調べ時間の費用として、州では連邦政府から40万ドル(4400万円)を使った。ワシントン州の交通安全委員会によると、2015年、路上での死亡の3分の1がわき見運転によるものだったという。
新しい車の中には衝突を防ぐために自動的に停止することができるシステムや、車線を誤って越えた場合に知らせてくれるシステムがある車もある。しかし、高速道路交通安全局では、「自動運転車ができるまで、道路には注意が必要だ」と述べている。
電話をしたり、メッセージを打ったりしているかどうかにかかわらず、ハンズフリーの音楽や映像でさえ、注意を散漫にし、事故や死亡につながることがある。
携帯電話で通話中の運転手は、血中アルコール濃度が0.08%の場合と同じくらいひどい運転になることが、研究で示されている。メッセージを打っている運転手は、血中アルコール濃度が0.16%で運転するようなものだ。
愛知県で横断歩道を渡っていた9歳の少年を、『ポケモンGO』をしていたトラックの運転手がはねて死亡させた事件の記事を読んだかもしれない。ここワシントン州でも、幹線道路の工事現場で旗をふる人が、メッセージを打っていた運転手にひかれて死亡した。日本のそのトラックの運転手は、3年間の懲役だった。私の州のそのドライバーは、危険運転致死罪を認め、これは最大20ヵ月間の懲役を意味する。
アメリカでは、運転中の携帯電話での通話が禁止されているのは14州のみだが、運転中にメッセージを打つことは50州中46州で禁止されている。
かつては、片手運転が問題の原因だと言われたものだったが、今では問題の原因はさらに深くなっているように見える。私は中東にいる多くの生徒たちに遠隔でレッスンをしている。彼らが私と会話をしながら運転しているのが分かったときに、私がまず第一に言うことは「車を路肩に寄せて止まって!」だ。
私たちが東京に住んでいたとき、アメリカの軍のラジオはわき見運転についての公共広告のスポットをよく流していた。助手席に座っている人が運転手に電話を切るように言って、わき見運転でどれだけ多くの人が死亡しているかを伝えてから、こう付け加える。「私はその一人にはなりたくないよ!」 まさにその通りだ!