私が8歳のときに、家族で北海道の美唄市と呼ばれる小さな町に引っ越した。この町の主要産業は石炭鉱業だった。それはきつくて、汚くて、危険な仕事だった。炭鉱はやがて閉鎖され、多くの人々が仕事を失った。しかし、この町の名前は、「美しい」という意味を表す漢字と「歌」という意味の漢字で書かれる。「美しい歌」とは、この町が貧しくてすすけていたとしても、素晴らしい町の名前だと思い、とても気に入った。
何年も後に、私はアイヌの口承文学の研究をするために札幌にいた。北海道の名前の80% ― 美唄も含め ― は、日本語ではなくアイヌ語に由来することを知った。政府は、日本人の開拓者が発音しやすいようにするために、元々のアイヌ語の名前をよく短縮した。時には元々のアイヌ語の名称の意味を漢字に翻訳した。それ以外の場合は元々のアイヌ語の名称の音を、元の意味とは関連のない漢字で表した。
美唄はこの好例だ。アイヌの人々はこの村を「ピパオイ」(沼地のイガイがたくさんいる場所)と呼んでいた。日本人の入植者がやってくると、この村は「ヌマカイ」(沼地のイガイを表す日本語)と改名された。最後に、元々のアイヌ語の名称の発音を簡略化した「ビバイ」に改名され、漢字はアイヌ語の意味とは関連のないもので書かれた。
北海道最大の都市札幌の名前は、意味ではなく音で選ばれた漢字で書かれている。元々のアイヌ語の名称は、アイヌ語で「サットポロペット」で「乾いた大きな川」という意味だ。しかし、北海道で2番目に大きな都市の旭川は、音ではなく意味で選ばれた漢字で書かれている。元々のアイヌ語の名前は、日本人の開拓者が「チャップペット」だと思ったもので、「朝日の川」という意味だった。
アイヌ語の単語は英語や日本語に慣れている耳には風変わりに聞こえる。カミホロカメットク(カタカナで表記される)は夫が毎年登る十勝の山岳地帯にある山の名前だ。私の耳には、魔法の呪文のように聞こえ、何回も繰り返して発音するのが好きだ。
北海道の地名は、アイヌの人々の生き方について教えてくれる。重要な歴史上の出来事や儀式の陸標を表現することもある。食料源や衣類の材料、家を建てる原料の場所を表すこともある。
先住民の言語に由来する地名は、日本以外でも多くの国々で見られる。もちろん、これには英語を話す国も含まれる。このテーマについては多くの本が書かれている。そうした場所を探すのは旅行の計画を立てるのにも楽しい方法だ。きっと、あなたはこういうことをすでにしているかもしれない。もしそうだったら、こうした地名から先住民の文化についてあなたは何を学んだだろうか。