『日の名残り』や『わたしを離さないで』などの小説で、記憶の長引く痛みと危険な空想を詳細で優美な散文で捉えた、日本生まれでイギリス国籍の小説家、カズオ・イシグロ氏がノーベル文学賞を受賞した。
イシグロ氏(62)の選出により、従来とは異なる選出が2年続いた後で再び、スウェーデン・アカデミー(ノーベル賞の選考委員会)による900万クローナ(1億2500万円)の賞(ノーベル賞のこと)の選出が小説家に戻った。
10月6日の選出は、生まれがイギリス以外のイギリス国籍の作家に賞を贈る最近の傾向を引き継ぐものでもあった ― 2001年の受賞者V・S・ナイポールさんはトリニダード・トバゴの生まれで、2007年の受賞者のドリス・レッシングさんはイランで生まれ、ローデシア(現在のジンバブエ)で育った。
イシグロさんはすでにイギリスで最も著名な作家の1人で、『日の名残り』でブッカー賞を受賞し、大英帝国勲章も受勲しており、イギリスで最も優れた作家のリストにたびたび登場する。スウェーデン・アカデミーは、『浮世の画家』や『忘れられた巨人』も含むイシグロさんの8冊の本を、「世界と結び付いているという幻想的感覚の下の深淵」を暴いた、感情の力のある作品と評した。