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2017年12月8日号掲載の記事(ST編集部訳) print 印刷用に全て表示
Essay

Should cash be king? (p. 10)

現金が一番?

私の知り合いの多くが日本を旅するのが好きだが、慣れることのできないことが1つだけある:どこへ行っても現金が第一なことだ。

デビッドカードやクレジットカード、一般的になってきている電子マネーのアップル・ペイやアンドロイド・ペイといった現金を持たずにできる支払い形態よりも現金の方が圧倒的に広く使われているのがなぜなのかは、多くの旅行者には理解しがたいかもしれない。多くの施設で、高いレストランでさえも、クレジットカードでの支払いを受け付けていない。このことについて、多額の現金を持ち歩くのに慣れていないため、不満の声をもらす友人もいる。

私は日本に数年前に住んでいたときに、このことに慣れていったのを覚えている。私はいつも最低でも数枚の一万円札と、かなりの硬貨を持って歩いていた。硬貨は持って歩くのが重たかったが、とても役に立った。

ある友人は、日本はさまざまな先端技術を早々に取り入れるパイオニアなので、なおさらこのことには困惑すると語った。彼は、「日本よりも技術的に遅れた国々がキャッシュレス支払いについては日本よりもはるかに進んでいるのはなぜだろう?」と尋ねた。

私にはそれがなぜなのかは分からない。しかし、私はキャッシュレス支払いの熱心な信奉者でもない。シンガポール政府が私たちの社会をキャッシュレス社会に変えようとしている企てにはやや懐疑的だ。

例えば、シンガポール陸上交通庁は公共交通システムの完全キャッシュレス化を目指している。現在、通勤通学客はバスや電車に乗るのに現金またはトラベルカード―先払い式のスマートカードで、地元の銀行口座やクレジットカードを持っていれば電子的にチャージできる―で支払いができる。

キャッシュレス支払いの支持者は、コストの低減や利便性の向上などを長所としてよく挙げる。しかし、キャッシュレス支払いシステムは、欠点もある。例えば、トラベルスマートカードのニュースが発表された後、この動きは現代的テクノロジーにあまりくわしくない人々を不利な立場に置くと多くの人々がすぐに反応した。高齢者は、現金を使って支払う方がずっとやりやすいので、キャッシュレス支払いに切り替えることを難しく思うかもしれない。シンガポールにはかなりたくさんの外国人労働者もいる。外国人労働者は現金で賃金を支払われていて、地元の銀行口座を持っていないかもしれない。

欠点はこれだけではない。キャッシュレス支払いをするたびに、私たちは自分のお金の使い方についてデータを提供している。このデータは銀行やサービス提供者にどのように使われるのだろうか? システムが故障したらどうなるのだろうか? 現金での支払いがバックアップとしてなければ、停電といったささいなことが想像できる以上の混乱を引き起こしうる。確かに、キャッシュレスでの支払い方法を選択肢の1つとして提供するのはいいが、もし支払いをする人または状況が現金の支払いを必要とする場合は、現金を使えるようにしておくべきだ。

現金は一番であるべきだろうか? それは簡単に答えられる問題ではない。おそらく、一番になるものが1つだけではない方がよいだろう。ひょっとしたら、かなりの数の異なる「一番」を受け入れることもできるかもしれない。あなたはどう思うだろうか?

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