「ST」は紙名を新たに「Alpha」として2018年6月29日より新創刊しました。 Alpha以降の全訳はこちら
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2017年12月29日&2018年1月5日合併号掲載の記事(ST編集部訳) print 印刷用に全て表示
Essay

Lost in translation (p. 9)

ロスト・イン・トランスレーション

1つの言語から別の言語に通訳をすることは、手強い仕事で、何年間も訓練を受けた語学スキルの高いプロにしかできないように思えるかもしれない。いつもそうだとは限らない。

実際には、通訳が必要な状況であれば、誰でも通訳者として行動することができる―あなたでも! 必要なのは、基本的な語学スキル、助けようという姿勢、人と違うことをする勇気だけだ。

私が初めて通訳をした経験は、何年も前、日本語を勉強していた神戸でのことだった。ある日歩いていると、アメリカ人観光客のグループが何人かの地元の日本人住民と話している場面に遭遇した。彼らはコミュニケーションに問題を抱えているようだった。私は、何が起こっているのかを確かめようと近づいていった。

「私たちは日本のお風呂を体験してみたいのです」とアメリカ人は言った。「どこに行けばお風呂が見つかりますか?」。日本の人は彼らが何を話しているのか全く分からなかった。聞き取った英単語は「Bath(お風呂)」だけだった。残念ながら、日本人は誤解をしてアメリカ人たちが「bus(バス)」を必要としていると思った。

状況はさらに悪化した。アメリカ人たちは「Bath! Bath!(お風呂、お風呂)」と叫び始め、意味を伝えようと服を脱ぐまねをした。当然ながら、この奇妙な行動に日本人はぎょっとした。返事として、日本人たちは「Bus! Bus!(バス、バス)」と叫び、近くのバス停を指差した。

問題は明らかだった。アメリカ人たちは銭湯(公衆浴場)に行きたかったのだが、日本語が分からなかった。日本人たちは助けてあげようと思ったが、英語が分からなかった。両方ともコミュニケーションをとろうとしていたが、意思疎通ができなかった。両方でいらだちが高まってきた。

彼らの問題を解決するには彼らには通訳者が必要なことは明らかだった。必死にまわりを見回したが、プロの通訳者はすぐ近くにはいなかった。どうしたらいいだろう?

徐々に、私は気づいた。もしかしたら自分が通訳できるかもしれない…それはばかげた考えに思えた。私は基本的な日本語が話せる初心者でしかなかった。通訳は公式な証明書と高いレベルのスキルを持つプロであることは誰もが知っている。

それでも、必要性は明らかであり、時間も急を要した。私は一歩前に踏み出して、2組の間に入り、仕事を始めた。「日本のお風呂に行ってみたいのですね?」とアメリカ人に確認した。彼らはうなずいて同意した。私はこのことを神戸の住民に基本的な日本語で伝えた。「彼らが求めていたのはそれだったのですね」と日本人は返事をした。「バスに乗りたいのかと思っていましたよ!」

2分という短い時間に、問題は解決した。すぐに、アメリカ人たちは親切に対応してくれた日本人に案内されて、近くの銭湯にうれしそうに向かっていった。

プロの通訳者は世界の舞台で計り知れないほど貴重な役割を果たしている。しかし、世界は、日常生活でのコミュニケーションを促すために外国語を活用する個人も必要としている。人と人との間の理解をつなぐ架け橋になるのに専門家である必要はない。一歩踏み出して、通訳を始めよう!

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