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2018年2月23日号掲載の記事(ST編集部訳) print 印刷用に全て表示
Essay

Room to grow (p. 9)

引越しは成長の機会?

春はもうすぐだ。仕事や住居の出入りが始まり、慌ただしい引っ越しシーズンの始まりである。Real estate(不動産)を表す漢字に、「動きがない」という意味の「不動」が入っているのは面白い。この単語は土地と定着物(建物、樹木など土地の上に定着したものを指す)を指すが、「動きがない、不動」という概念は、一部の不動産仲介業者や家主の態度を表すのにもふさわしいと私は思う。

家を引っ越すにはかなりの負担がかかる―金銭的にだけでなく、精神的にもだ。日本で、日本人ではない友人と私は、日本語で全てが行われているとしても、不動産仲介業者や家主からの、冷淡な顧客サービス、不必要な尋問、冷ややかな態度を味わってきた。東京には、書類で私の名前を見て、丁寧な話し方をやめて、「たいていの家主さんは外国人の入居者を受け入れないって知ってますよね?」と言った仲介業者もいた。神戸では、日本人で入居しそうな人には普通は聞かない質問だと自分でも認める質問を、私たちに根掘り葉掘り聞いた仲介業者もいた。「3つ目の部屋はどうするつもりですか? どんちゃん騒ぎはやめてくださいね」。

賃料を払う余裕があり、物件を丁寧に扱って、近所の人々に敬意を払える入居者が入るのかどうかを家主が知りたいというのは理解できる。しかし、最低レベルの入居者だと憶測されるのはいら立たしい。ニュージーランドの家主も入居しそうな人についてよく憶測するが、日本とは違って、「外国人入居可」という文言を賃貸物件の広告で見ることは決してない―こういう文言は私には「ペットOK」と同じトーンで書かれているように見える。

そういうわけで、日本で私を他の入居者と同じように扱ってくれる家主や不動産仲介業者にはいつも、永遠に感謝する。一番最近の家主さんには特に。家主さんと会って話す機会が持てただけではなく、日本人ではない2人に、何世代にもわたって引き継がれてきた家を貸すことに同意してくれた。家族が数世代にわたって同じ家に住んでいる近所の人々も、おそらく、やや心配している。しかし、どちらかといえば、一番緊張しているのは私たちだ。私たちがする(あるいはしない)あらゆることは、きっと、他の日本人ではない人々全員に影響を与えるだろうから。

私たちの新しい家には庭がある。うまく育つためには、土は押し固められすぎていたらいけない。根に届く空気に十分なくらい柔らかい必要がある。異なる他者に対する人々の態度と、土はちょっと似ているように思う。土が硬すぎると何も育たない。私たちは新しい地域に根を降ろしながら、近所の人たちと学び合えるよう願っている。土地と住居自体は動かないかもしれないが、お互いの見方や対応の仕方については、いつだって成長の余地がある。

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