シンガポールではどこへ行っても、派手な観光地でも地味な住宅街でも、オレンジや黄色の自転車を見かける―あっちでもこっちでも、ほとんどどこでも。
これらの鮮やかな色の自転車は、自転車シェアリング会社のものだ。主な3社は、oBike、Mobike、ofoで、それぞれ少なくとも12ヵ国で営業している。例えば、ofoは、世界の250都市以上で1000万台の自転車を持っている。Mobikeは昨年8月に札幌でサービスを開始した。
シェア自転車を使うには、シェア自転車の会社のアプリをスマートフォンにダウンロードする。自転車を見つけたら、アプリを使って自転車の番号を入力するかQRコードをスキャンするかして、ロックを解除する。好きなだけ、行きたいところへどこへでも乗っていける。使い終わったら、アプリを使って乗車を終了し、自転車に鍵をかける。アプリを使って自転車を探すこともできる。
通常は、利用者は約50シンガポールドル(4,000円)の払い戻し可能な預け金を支払う。1回の乗車料金は会社によって異なる。15分で50セント(40円)のところもあれば、利用時間に関係なく1回の利用につき50セントのところもある。運営会社の中には、割引コードや、週末無料乗車を提供しているところもある。
従来のシェア自転車の仕組みとは異なり、こうした自転車は利用者が自転車を返しに行く特定の駐輪場がない。言い換えれば、利用者は自転車をどこへでも置いてくることができ、次の利用者が使える。これがどれだけ便利かは想像がつくと思うが、悪い影響もある。用水路のような奇妙な場所に乗り捨てられる自転車もある。歩道で通行の邪魔になっている自転車も多く目撃されている。覆いのない屋外に置きっぱなしにされているものはさらに多い。
要するに、こうした自転車が目障りな社会の邪魔者になっている。
運営会社は、こうした問題の解決に向けて努力していると述べている。迷惑な場所に駐輪された自転車や、壊れた自転車は1日以内に撤去すると約束している。
残念ながら、状況は改善されていないようだ。こうした会社がシェア自転車のサービスを立ち上げてから1年以上になるが、シェア自転車は今でもでたらめに止められている。
シェア自転車が指定の場所に確実に駐輪されるようにするために、国土交通当局は今こうした会社にジオフェンシング(地図上で仮想的な壁を設置すること)の導入を義務付けている。これは、自転車が特別に示された区域を出入りしたかどうかを検知できる技術だ。利用者は、特定の区域内に自転車を駐輪しなかった場合、ポイントを引かれる可能性がある。ポイント残高がなくなると、以降シェア自転車を使うことはできない。反対に、適切な場所に駐輪すれば、利用者はポイントを得られる。
このアメとムチの手法がうまくいくかどうかは時間が経てば分かるだろう。しばらくは、進行中の公共教育の取り組みが、利用者の行動を形成していく上で不可欠だ。たぶん、不適切に駐輪された自転車を移動させたり、配慮に欠ける行動を偶然見つけたら声をあげることで、誰もが役割を担うことができるだろう。