「お水をいただけますか?」
シンガポールで外食をすると、この質問をすることになるかもしれない。日本とは違い、どこの飲食店でも自動的に無料の水を提供してくれるわけではない。頼まなければいけない場合もあるし、お金を払わなければならないこともある。
シンガポール・レストラン協会が2015年に『ストレイツ・タイムズ』に伝えたところによると、シンガポールでは約10分の1の飲食店で水道水が有料だ。コップ1杯の水は通常、30〜80シンガポールセント(25〜66円)の間だ。
これにはいくつか理由がある。まず、費用だ。レストランでは無料の水を提供するのに毎年5,000〜1万シンガポールドル(41万1,300〜82万2,600円)の費用がかかる場合がある。レストランでは、飲み物の売り上げも失う。飲み物からの収入はレストランの稼ぎ全体の最低20%を占めることがある。
ホール係のスタッフが忙しい作業に加えてコンスタントに水のおかわりを継ぎ足さなければならないかもしれないと気にしている飲食店もある。
しかし、多くの飲食店は、お客さんが水を必要としていることを理解している。ジョッキとグラスを渡して、お客さんに自分で水を注いでもらうことで人手の問題を回避している店もある。
さらに先を行く飲食店では、温かいお湯と冷たい水を提供する。これは、シンガポールと日本のもう1つの違いだ。ここでは客が温かいお湯か冷たい水かを選ぶことができることが多く、絶対に両方が求められている。
若いころは、温かいお湯よりも冷たい水を、ホットコーヒーよりもアイスコーヒーを選んでいた。年を重ねるにつれて、親や年上の友人と親戚に似てきた。どれだけ暑くても、温かいお湯や飲み物を選ぶことが多い。
親は私の変化を喜んでいる。冷たい飲み物を飲むと血管が縮んで消化が妨げられると親が言っても信じたことはなかった。しかし、年が経つにつれて、冷たい飲み物を飲んだ後、胃にどんな感じがするかにもっと注意を払うようになり、冷たい飲み物を避けていた方が調子がいいことに気がついた。うだるような暑さの日でも、常温の水を選ぶ。
残念ながら、温かいお湯と冷たい水を飲むことに関する健康効果について、確かな科学研究は見つけられなかった。冷たい水は減量に良いと主張している健康サイトもあった。温かいお湯は、胃痛があるときに症状の改善に役立つと言う人もいる。
よく冷えた水を飲むことに慣れている人たちにとっては、温かいお湯を飲むという考えはおかしな感じがするかもしれない。きっと、ぬるいコーラや熱いビールを飲むのと同じくらい異質なことに聞こえるだろう。私も温かいお湯を楽しめるようになるとは思わなかった。しかしおそらく、ほかの多くのことと同じように、温かいお湯を良いと思うようになるのに必要なのはちょっと試してみることだけだろう。