(ジェンの家の前に駐車した車のそばで)
アンディ:出発の準備はいい?
ジェン:うん、そう思うわ。
アンディ:荷物は全部詰めた?
ジェン:(ゆっくりと)うん。
アンディ:ガソリンは十分ある?
ジェン:ねえ、何なのその質問? お父さんみたいね。
アンディ:ごめん、多分、何だか不安なんだ。
ジェン:あなたが不安なの? 私はどうなるの?
アンディ:わかってる。ほんとに車で送って行きたかったんだけど、夜勤の仕事があって。
ジェン:わかってるわ。問題ないの。全然大丈夫よ。
アンディ:だよね。それに、君は運転が上手だしね。テーマパークに行く途中、あのトラックをよけるために急にハンドルを切ったの覚えてる?
ジェン:あれは悪かったわ。ちょっと恐すぎたわよね?
アンディ:いや、それほどでもなかったよ。トラックがぶつかる前にこっちのレーンに戻れるってわかってたからね。
ジェン:ほんと? ずいぶん大きな叫び声を上げたわよね。
アンディ:わざとそうしたんだ。あの瞬間をもっとドキドキしたものにするためにね。(もっと真面目な調子になって)あれは、本当にすばらしい夏につきもののハイライトだったよ。
ジェン:いい夏だったわね?
アンディ:(静かに)ほんとに。ビーチでのあの夜を絶対に忘れないよ。満月と、あのたくさんの星の出た。
ジェン:一緒にいつまでも持ち続けるたくさんの思い出の一つね。
アンディ:そうだといいね。その「一緒に」っていう響きがいいね。
ジェン:ほんとにたくさんの素晴らしい時間だったわ。
アンディ:君のお父さんに会った時以外はね。僕のことを気に入ってもらえなかったみたいだね。
ジェン:まさか! お父さんが会った私の他のどのボーイフレンドよりも、あなたのことをずっとすばらしいと思ったのよ。
アンディ:(心配そうなふりをして)そんなにたくさん?
ジェン:そういうつもりで言ったんじゃないでしょ。
アンディ:わかっている。からかってるだけだよ。
ジェン:実のところ、あなたが町を出て学校に行くんじゃなくて、町にいてここの大学に行くことを、お父さんはずいぶん関心してたのよ。
アンディ:町を出られたらとは思うんだけどね。でも、お母さんの面倒をみるためにここにいなきゃいけないんだ。お母さんは一人でも大丈夫って言うけど、僕はそう思わないんだ。体の問題があるからね。
ジェン:そうよね。それに、そう思うのは私だけじゃないわ。あなたがお父さんに一番印象づけたのは、そのことだったの。
アンディ:うーん、僕が心配しているのは実は君のお父さんのことじゃないんだ。
ジェン:どういうこと?
アンディ:君はヴァッサー大学に行ってしまう。そこで出会う仲間の男たちと、僕はどうしても知り合えない。
ジェン:「男たちと出会う」つもりはないわ。他の女の子たちについていこうと思ったら、そんな余裕がないほど授業の勉強がたくさんあると思うわ。
アンディ:うん、そうだね。それでも、女子校だったらいいのにと思うよ。
ジェン:この大学に来る男の人たちは、きっとおたくよ。
アンディ:そうだといいけど。
ジェン:(沈黙)とにかく、行かなくちゃ。
アンディ:そうかもね。でも、まずはジェシカを車で拾っていくんだよね?
ジェン:うん。知り合ってから、彼女はいつも自分の家の前の道路脇で待ってるからね。
アンディ:彼女はいい子だね。それに、君が一人ぼっちで運転していかなくてよくて、嬉しいよ。
ジェン:そうね。それから、彼女はアルバニーに行くのよ。そこのニューヨーク州立大学に入学するの。
アンディ:うんうん、知ってる。
ジェン:あ、そうなのね。あら、どうも長々とおしゃべりしてるのは私のようね。
アンディ:ここを去りたくないからだといいんだけど。
ジェン:あなたの言いたいこと、わかってるわ。私、私たちの小さな町を愛してるもの。
アンディ:うーん・・・そういう意味じゃなくて。僕から離れたくなければいいんだけど、って意味だよ。
ジェン:(甘い声で)うーん、それもあるわ。
アンディ:この夏以来は。
ジェン:思い出の夏ね。
アンディ:で、僕のことを忘れないね?
ジェン:どうして忘れられるかしら?
アンディ:それで、戻ってくるんだよね?
ジェン:戻ってくること、わかってるでしょ。
アンディ:そうだといいな。
ジェン:私もそうしたいわ。
アンディ:ほんとにそうだといいな。
ジェン:私も。じゃあね、アンディ。
(二人はキスをする。彼女が去り、暗転)
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