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小さな英語教室

By Yuri Kiba / キバ・ユリ

オーストラリア人の夫と結婚し、シドニー在住歴24年の筆者が、学校とは離れた教育の場で、子供たちを見ていて感じたこと、考えさせられたことを紹介するコラムです。
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Yuri Kiba / キバ・ユリ

Vol. 11 : 日本の英語教育について思うこと

 日本では多くの人々が英語教育に時間とお金をかけ、その改良に論議を繰り返し、英語を学ぶことの困難さに頭を抱えているようですが、私には、日本で英語を学ぶことくらい楽なことはないように思えます。切羽詰まってもいないし、恥をかくこともない。

 24年前にシドニーに住み始めたころは、まさに悪夢でした。今、ここでそれを書くのも嫌になるほどです。日本での英語教育とは一体何だったのだろうという疑問に常にさいなまされました。

 今、長い外国生活を振り返り、子供たちの話や昔と今の英語教育を交えて考えるに、日本の問題点は、海外に出かける日本人にとって、何の情報が一番必要とされているか理解していない教育関係者が多いことと、国民のほとんどが英語を使う必要に迫られていないにもかかわらず必修科目であるため、本来外国に目を向けるべく英語のターゲットが国内の受験に対処する文章分析となり、そこから抜けきらないこと、この2つに限定されるのではないかと思います。

 教科書は変わったと言いますが、私には絵空事としか思えません。そもそも100ページ前後の教科書を1年に1冊などというスピードは、英語の習得に危機感を訴える国情とかなり矛盾しています。中には、特別な教科書を使用して、英語教育に力を入れていると自負する学校もありますが、教科書で取り上げる題材や試験問題を見る限り、昔と少しも変わっていません。

 日本の諸事情を取り上げている教科書が少ないのは驚きです。海外に出て、日本人は何を聞かれるでしょうか。他国の歴史や文化など聞かれません。英語がある程度話せるようになって、私自身が一番直面した問題は、日本のことを聞かれたときにどう答えてよいのか分からなかったことでした。これは私だけではないと思います。

 英語の必要性に迫られた方々で、学校で受けた英語教育が直接役に立ったという人はまれだと思います。日常会話や日本事情の本、または専門家に依頼したスピーチを丸暗記などという人がほとんどでしょう。その時点でだれもが考えます。「These are pens. を単数形に直せ」などという問題のはかなさを。

 文法は大事です。しかし、文章分析を重視しすぎて、すでに使われなくなったり、死につつある表現を教えていることに気付いていませんか。気付いていても、大学受験のためには仕方がないとして教えているとしたら、その罪は大変に大きいと思います。

 スペリングも大事かもしれません。しかし、英語はアルファベットの読み方を基本にしていないので、英語圏の子供にとっても容易ではないのです。それを、日本では、すべての子供にスペリングを強いて、重箱の隅を突つくような採点をし、子供の能力を評価しています。

 ご家庭でも、学校の試験結果しか念頭になく、試験内容には何の疑問も感じないで、「こんな点ではだめじゃない」としかるお母様方が多い。子供の成績が落ちるととたんに、本来の英語を学ぶ目的とは程遠い要望が多くなります。

 子供は覚えるのも早いが忘れるのも早い、日本では周囲で英語が話されていない、しかし、英語習得は緊急である、という現実を踏まえて英語を教えるということは、確かに厳しいものがあります。これを成功させるためには、今のような、国民総動員体制や、教師を養成する英文科の質、または、英語習得の目的が受験に傾いている状況ではまず不可能でしょう。生きている英語や多様な表現に対処できる教師、優秀な生徒は上の段階にどんどん上がれるような柔軟な制度、そして、英語を受験から切り離す意識改革が必要です。もしそれが実現したら、個人的な願いですが、教材に日本という国をもっと取り入れてディスカッションしてほしい。日本を正しくアピールすると同時に、安易な日本への非難に対して堂々と反論できる日本人を養ってほしいと思います。

 文法用語を使っての文章分析、単語の羅列の暗記、教師によるワンサイドの授業、スペリングの細かな訂正、テーマのない行き当たりばったりの外国紹介。これらは、私が数十年前に田舎で受けた英語教育です。今の英語教育、昔とあまり変わっていないと思うのは、私の思い違いでしょうか。

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