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小さな英語教室

By Yuri Kiba / キバ・ユリ

オーストラリア人の夫と結婚し、シドニー在住歴24年の筆者が、学校とは離れた教育の場で、子供たちを見ていて感じたこと、考えさせられたことを紹介するコラムです。
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Yuri Kiba / キバ・ユリ

Vol. 19 : 英語の早期教育について思うこと

 私自身、子供を外国で育て、海外在住の日本人の子供たちの様子を見聞きし、そして今、東京でも帰国子女が多い地域で多様な生徒たちに英語を教えていると、それぞれのケースがあまりに千差万別で、一言で子供の英語早期教育はこうあるべき、などと言えないのが正直なところです。一つ例を挙げましょう。

 昨年、英語が流ちょうな幼稚園年中児の双子の姉妹の体験レッスンを受け持ちました。母親(日本人)の話によると、日本で育った姉妹の父親は、顔立ちは完全に白人なのですが、その父親の両親が英語をまったく教えなかったため(こういった方針の家庭もあるのですね)、母親の祖国アメリカを訪れてもコミュニケーションができなかったばかりか、日本でも外国人と見なされたために、英語ができないという大きなコンプレックスを抱えていたのです。そこで自分の子供には同じ経験をさせまいと、インターナショナル幼稚園に送りました。

 幼稚園では週の大半をアメリカ人の教師と過ごすので、私が会ったとき、姉妹は英語の方が流ちょう。ここまでは父親の念願どおりです。しかし、国籍も住居も日本が拠点となるので、小学校は日本の公立へ送り、英語は第2外国語として継続することに決めました。会話はいったん忘れてもよい。しかし読むことで多様な表現を増やすのも英語継続の方法ではないかと来校し、体験レッスンののち、即入学させたのです。

 子供たちはプレッシャーを感じている様子もなく、入学後の英検5級は満点に近く、幼稚園年長児の今、4級の勉強をしているそうです。

 さて、これを聞いて、単純に賛同するなかれ。まったく異なるケースの体験レッスンを行なったこともあるのです。

 その子は別のインターナショナル幼稚園に通う年長児の男の子でした。両親は日本人ではなく、日常生活は日本語、家では両親の母国語、そして母親が英国で働いた経験があったため、英語も学習させようとインターナショナルの幼稚園に入れたということでした。ところが2年間通っているにもかかわらず、英語の語いはわずかで、会話は理解するけれども話せない。日本語も最低限の返答ですませしまう。翌年小学校入学なのですが、方針は決まっておらず、とりあえず見学に来たとのこと。  結局、子供が英語を学ぶことにまったく興味を示さず、入学はしませんでした。彼の場合、どの言葉も中途半端になり、アイデンティティーの問題にも突き当たるであろうことは目に見えています。しかし、それがはたして簡単に非難されるべきことなのかどうか。

 外国語というと、すぐに、通訳、商社、外資系、外交官など決められた職業範囲の中で話が運びがちですが、そのような狭い領域内で、子供の外国語学習の方針を示唆することは性急だとも思うからです。この子のような場合、成長して問題に気付いたときが正念場だと思います。どう転ぶのか。これは家庭環境や人間関係など、複雑な要素が影響してくるでしょうね。

 外国語教育に関して大きな変革の過渡期にある日本。国全体が揺れ動いています。主導をとるはずの国の対策が遅いのと、結局日本語だけで事が足りてしまう国なので、国民は右往左往というところでしょうか。

 そんな中、この世相を反映して出版された早期英語教育に関する本を読み、私自身、いろいろと考えさせられました。筆者により意見はさまざまですが、根本的に共通点がありますね。「母国語を大事に」ということです。私もまったく同感です。しかし、それを踏まえた上で、子供に早期英語教育を受けさせるべきかどうかは、正直言って「分からない」。なぜなら、現場の教師にしてみると、どんな理由で送られてきたにせよ、目の前にいるのは一人の人間であり、十把一絡げに分析して結論を出せないからです。親に関しても同様です。

 日本語しか話さない環境で英語を勉強する子供たち。気の毒だと思うと同時に、よく覚えるなと感心もします。試行錯誤の中、徐々にだけれど、日本人の英語の程度は進んできていると思うのは、私の気のせいでしょうか。

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