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小さな英語教室

By Yuri Kiba / キバ・ユリ

オーストラリア人の夫と結婚し、シドニー在住歴24年の筆者が、学校とは離れた教育の場で、子供たちを見ていて感じたこと、考えさせられたことを紹介するコラムです。
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Yuri Kiba / キバ・ユリ

Vol. 39 : 中国語を学びたかった姪

 今、姪が大学4年で就職活動をしていますが、このご時世、なかなかむずかしいようです。振り返って数年前の入学に際し、相談を持ちかけられた内容を思い出すと苦笑せざるを得ません。というのは、中国語をやりたいという本人の希望があって、オーストラリアから来たばかりの私は大変感心し、大いに勧めたからです。ところが、最終的に、中国語とは全く関係のない東京の「多少」名のある大学に入学してしまいました。

 最初に中国語をやりたいと言った彼女の意思が頭から離れない私にしてみれば、この4年間はお金と時間の無駄としか思えず、その旨を言うと周囲からは「本人は本人で学生生活をおう歌したのだからそれで良いのだ」と、かなりきつい反感の言葉が返ってきます。

 私は、多国籍の人々、特に中国人が多く住むシドニーに長年おりましたし、外国から遠眼鏡で見て、日本が進んでいる、または進むべき方向に関し、何か感じていたものがあったのだと思います。それを地方の、しかも中国とは全く縁のない17歳の女の子が言い出したのですから、日本も変わったなと思いました。ところが、外国語大学はどこも大変な狭き門で、彼女の実力に当てはまったのは関西に位置していたのと、関東では「知名度が無い」とのことで周囲が考え込んでしまった。

 結局、東京の「多少」名のある大学の、トレンドに合わせて新規に独立した学部に入りました。その学部に私は賛成しかねたけれど、すでに決めたことなのであえて反対はしませんでした。それは、時代の流行に合わせて作られた学部でしたが、どうも表面だけ「新しい分野」をとりつくろっているような感じがしたからです。なぜなら、その旅行業界に私自身が長く居ましたから、あえて大学で学ばなくても、という思いがありました。それに、語学は「話せて当然」という業界なので、雇用する側では学歴より語学の即戦力のある者を雇うのが必須だということも分かっていたからです。

 私自身が通信教育を通し、日本の大学の英語教育者に疑問を感じていたこともあり、どのようにして彼らが即戦力のある英語人を育成するのか、ある意味では不可能だと思っていたことも賛成しかねた理由でした。それらの思いは完全に当たり、彼女の英語は、4年間毎日、実用英語にかなりの時間を割いていたにもかかわらず、「話せる」には程遠いものでした。これには本人も何か感じたらしく、今は就職できる所に就職し、お金をため、外国へ行こうという決意を固めています。兄も東京で学生生活を送っており、家計が大変なので、4年間アルバイトで小遣いを稼いでいた彼女のことですから、何とかやり遂げるでしょう。

 確かに学生生活はおう歌しただろうし、日本の国内では、名の通った大学卒という肩書きで対面上は安泰だと思います。でも中国語をやっていれば、もっと違う人生が開けていたような気がするのは、半分日本人でないような私のたわごとでしょうか。まあ、一時期でも中国語をやりたいと願ったこと、そして4年後の今、大学教育の不十分さを感じ、海外に出る決意をしている彼女の意志だけでも尊重すべきだろうとは思います。

 話は少し変わって、この記事が出て間もなくの9月11日は衆議院選挙です。私は今、日本は変わらなければならないときだと思います。すでに日本の底辺が変わりつつあるこの時代、現状維持とか過去に執着する政治家は、この底辺の動きに気付いていないのかもしれません。少なくとも私の周囲を見る限り、子供たちの情報とその意識は、もう私の時代のものではありません。彼らを囲む大人たちの意識も子供の生活環境に合わせて変わりつつあると感じます。また、今の国際環境を考えた場合、好むと好まざるとにかかわらず、日本独自の道を行くことはできません。

 ただ、感ずるだけで根拠はなく、24年海外にいて日本に帰って来た者が抱く直感のようなものだと、一笑していただいてもよいかと思います。それにしても、改革賛成側の政治家に、海外に出ておられた方々が多いのは私の思い違いでしょうか。

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