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小さな英語教室

By Yuri Kiba / キバ・ユリ

オーストラリア人の夫と結婚し、シドニー在住歴24年の筆者が、学校とは離れた教育の場で、子供たちを見ていて感じたこと、考えさせられたことを紹介するコラムです。
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Yuri Kiba / キバ・ユリ

Vol. 66 : 教師の質を問う前に、文科省職員の質を問う

 人間、大変なショックを受けると、その記憶が脳に懲り固まって、物の見方がすべてそれを土台にしてしか見られなくなるということはありませんか。私の場合、日本の教育現場での不祥事や苦しむ子供たち、教育政策への批判などを聞くとき、シドニーで遭遇した文部省(今の文科省)職員のショッキングな思い出を抜きにして、今の日本の教育を判断できなくなっているのです。

 あまりに低劣な話なので、今まで人に言うのもためらわれたのですが、古今東西、教育の問題が取りざたされるたび、まず、やり玉に挙がるのが教師、そして教育委員会です。しかし、トップで日本の教育を動かす文科省職員の評価を、今までに誰が取り上げたでしょうか。

 いじめ対策として教師の評価表を提出させる愚鈍さ。いじめの件数を近年ゼロと公表するおめでたさ。受験の弊害が問われれば、弊害ばかりのゆとり教育。これらの政策を誰が打ち出してきたか。底辺を非難しても、解決にはなりますまい。

 現場の教師に対して同情しているのではありません。これらの愚策に、誰一人として声を上げない教師たちの意気地のなさも驚きではありますし、質の悪い教師に関する報道も嘘ではないでしょう。しかし、私はシドニーでのある経験から、文科省職員の質を問いたい。その出来事とは…。

 舞台は、十数年前のヒルトンホテルの食堂。午前9時半ごろ。泊り客たちが朝食を取っており、食堂は満席に近い。私はその日、日本に帰る客に会うために食堂へ行ったのだが、入ってすぐに異様な雰囲気に気付く…。

 ドアに近いテーブルで、一人の日本人の男が大声でわめいている。30歳前後で背が高く、見かけは悪くない。一見して酔っ払っているのが分かる。ろれつは回らないし、目も定まっていない。メガネをかけたやせ細った男が横に座って、酔った男を見てはクスクス笑っている。同僚だろう。その隣には旅行会社の女性。すごい形相で一生懸命に男を制している。彼らのテーブルの隣には外国人の家族が4人座っており、ご主人が酔っ払いの大声に首を振ったり、しかめ面をしている。

 ロビーで会った同僚のガイドが、今日はほかの旅行会社がゴルフ接待している文部省職員2人と、JTBが世話をしている文部省支援研究グループの連絡役を頼まれたと言っていた。2人の文部省職員は研究員グループの世話役だとのこと。その彼女が、食堂に入ってきて、わめいている男のテーブルに座ったのに驚く。まさか、あの2人が文部省職員? 困惑しているガイドに、旅行会社の女性が「連日、朝から飲んでるのよ」と言っているのが聞こえる。

 旅行会社の女性はほかの客に迷惑だと悟り、外へ連れ出そうとしたときだ。若い日本の女性が2人、食堂へ入ってきた。そして信じられない出来事が起きる。その時以来、私の文部省職員に対するイメージは強力接着剤で脳にベッタリと張り付き、いまだに取れない。多分、一生取れないだろう。

 酔っ払った男は、先に入ってきた女の子の髪の毛をグイっと引っ張った。旅行会社の人とガイドの「Kさん、やめなさい」という声が聞こえる。女の子も、何が起こったのかとっさに判断ができず、言葉が出ない。正気に返って、髪の毛を彼の手からむしりとり、彼らを横目で睨みながら、離れたテーブルにつく。友達が肩を抱いてなぐさめている。そのあとだ。酔っ払いは、彼女たちに向かって大声で怒鳴った。「何様だと思ってんだ。気取りやがって。股を開け〜!」。

 今でもあれは悪夢だったのかと思いたい。私は、この言葉をただ、「わいざつな言葉で…」と書こうとしたのですが、本当の言葉を書いた方がよいと思いました。

 後日談では、ドイルズという有名なレストランでも大騒ぎで、ウェートレスを呼ぶのに「くそババア」と叫んだり大層ひんしゅくを買ったとか。5年間の旅行業界で見た最悪の日本人で、今でも名前は覚えています。

 わずかな人間の低劣さから全組織を判断するのは、酷であるのは知っています。しかし、このような人物を雇った組織に眼識がないことは事実ではないでしょうか。

   お上の指導要綱に沿った授業のつまらなさ。6年間の英語教育がだめなら、小学校から英語を勉強すれば改良されるという単純さ。文科省の愚策を挙げたらきりがありません。しかし私は驚きもしません。シドニーの出来事以来、日本の教育問題を常に文科省職員の質と連結してしまう私ですが、今日本に住み、その想いはますます強くなっています。

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