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小さな英語教室

By Yuri Kiba / キバ・ユリ

オーストラリア人の夫と結婚し、シドニー在住歴24年の筆者が、学校とは離れた教育の場で、子供たちを見ていて感じたこと、考えさせられたことを紹介するコラムです。
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Yuri Kiba / キバ・ユリ

Vol. 69 : 教育再生会議から考える日本

 小泉政権下、国民は、一票が政治に反映される面白さを始めて味わったのではないだろうか。政策の賛否はさておき、政治自体が面白かった。そしてこの間、日本国民の政治意識は大きく転換したように思う。日本に帰国して6年目。私は、政治家や官僚の根回しが次第に効かなくなってきたこの国の変わり様を今強く感じている。

 安倍政権が強力に推し進める戦後教育の改革。その教育再生会議第一次報告の原案に対し委員の一人渡邉美樹氏が「全く不満です」と言及したのは、すがすがしい。私のような門外漢が内容も知らずして安易に批判するべきではないことは重々承知しているが、原案は官僚が用意したものであることは知れているし、一部の委員の呼びかけにもかかわらず、会議が「非公開」なのだから何を言われても仕方があるまい。

 会議中、アメリカと英国の教育改革に関する資料が渡された際、委員から「なぜ英国や米国流ばかり参考にするのか」という意見が出されたというが、従来の英米の覇権から離脱しつつある新しい傾向だとの思いを強くする。また、「高水準の学力を維持している北欧諸国の例がない」という指摘が出た事実も同様である。国内では、「国家の品格」や「武士道」などの愛国心を訴えた本がベストセラーになっている日本思想の風向きの変化が見えて面白い。

 私が知っている限りの日本の委員会は、政治家や官僚が委員を人選し、官僚が作った案を「おおむね了承された」というあいまいな言葉で蚊帳の外にいる国民に報告し、官僚や族議員の都合の良いようにしか運営されてこなかったという印象が強い。私にとり、これが壊れたと思ったのは、小泉首相が設立した道路公団民営化推進委員会であった。今回の教育再生会議のメンバーは体制派が多いと悪評だが、以前のような完全な密会の形をとることはもはや許されない。内部から、会議を公開しろという意見が出ていること自体、一昔前とは大きな違いがあるように思う。

 第一次報告の原案に対して不満を持つ委員の一人、義家弘介氏は、「早く作れと言われて家を作っても、地震がきたら壊れる。子供達は崩れたひずみに入ってしまうから、固い基礎を作らねばならない」と述べているが、これは裏を返せば、「家が壊れて子供が犠牲になってもよいからとにかく作れ」という輩が再生会議の背後(事務局)にいるということを示している。彼らにとっては最初から子供など念頭にない。

 asahi.com〈12月22日〉によれば、この原案を出した事務局は官僚出身者が占め、教育改革には、与党の文教族議員や文科省の諮問機関である中央教育審議会、規制改革、民間開放推進会議などが絡むため、慎重になっているということではあるが、これだけを見ても子供は二の次であることが明らかだ。

 教育に関するタウンミーティングのやらせも、役所人間どもの保身が第一の目的であり、子供のことなど眼中にはない。この類のやらせは長い間やってきたものであろうが、今、内部情報を提供するシステムが作られつつあり、これによる内情暴露も今後の国民の意識を変える大きな要素である。

 戦後の教育を改革するならば、まず文科省の解体を私は進言したい。いずれ、国民の意識の変化が積み重なれば、その方向に進むとは思うが、日本での改革には月日がかかるのが常である。再度、力のあるリーダーが出現するころには今の文科省の役人は死亡か退職であろうから、現状の保身しか考えぬ彼らにとり、現在の批判など、かげろうの羽音のようなものだ。また、今の野党をご覧あれ。あまりに魅力がなさすぎて票を投ずる気にもならぬ。

 しかし、日本の国民の政治意識が小泉政権以降変化したことは確かであると思う。これは、海外生活の長かった者だけの想いではあるまい。そこで、今回の教育再生会議の、現状に不満を訴える委員に期待をするのである。このまま飲み込まれるか、自分たちの主張を通すか。強いリーダーのない今、国民の意気高揚のためにも最善を尽くしてほしい。背後には日本の子供たちがいる。

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