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小さな英語教室

By Yuri Kiba / キバ・ユリ

オーストラリア人の夫と結婚し、シドニー在住歴24年の筆者が、学校とは離れた教育の場で、子供たちを見ていて感じたこと、考えさせられたことを紹介するコラムです。
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Yuri Kiba / キバ・ユリ

Vol. 75 : 英検について

 これまで英語を子供たちに教えるにあたり、TOEFLやTOEICは念頭になかった。子供たちが小・中学生で、留学や入社を視野に入れていなかったからだが、英検にまつわる話はこのコラムに頻繁に書いてきたように思う。

 そもそも、英検との出会いは、勤めた英語学校が英検をうたっていたからだった。しかし、英語学校の英検対策問題が面白くなく、学校のために生徒が利用されているようで、当初は毛嫌いしていた。

 ところが、学校の教材や方針を無視して、自分なりに教えてみると、これが結構楽しめるのである。生徒は合格すると賞状がもらえてうれしいし、不合格でもABCのランクが出てくるから次回の指針となる。もちろん英語能力の適性があって辞めた生徒もいたが、出来る生徒は英検をバネに、面白いように上達していった。

 その結果を見ながら、周囲が英語を話さない日本で、英語の語いや表現を増やす手段として、英検は格好の手段だと思うようになった。そして、出来る生徒には、英語を手段として、世界に通用するような高い教養を養う助力になればと願うようになった。会話など2の次だ。

 中でも、準2級以上の長文は、見事なくらい主題・展開・結論の形を取っていて、英語圏の学校で課されるエッセーの構造をも教えることができる。3級の「お知らせ」も、学校やコミュニティーでの情報を得る勉強となる。また、メールは手紙を書くときの役にもたつし、メール速読の訓練もできる。

 しかし、最大に称賛すべきは、英語検定協会が、毎年改善する努力をしていることと、読む・聞く・解釈する・話すという4分野がカバーされているため、中学・高校・大学でこの英検をかなり受験の考慮に入れていることであろうか。

 そんなメリットを持つ英検だが、自分自身は受けたことがなく、子供に不公平だと思って、この1月に1級を受けてみた。準備として、1級単語を暗記したが、これは、何度辞書を引いても忘れる単語の定着に役立ち、今、本を読むのがかなり楽である。単語は覚える努力が必要であるなとしみじみ感じた。

 しかし、試験要項は読まず、リスニングも練習もしなかったため、戸惑ったことは確か。筆記問題の最後は小論文だったが、手紙文だと思っていたのでうろたえた。それをようやく書き終えたら、時間ぎりぎりで、見直している暇などない。その後すぐに「リスニングに入ります」というアナウンスがあって、休憩時間なし。100分の筆記だったので、せめて10分くらいの休憩をくれても、と思ったが、まあ、仕方がない。

 リスニング前の解説は長いと思い(ほかの級はかなり長い)、どんな問題形式かと、ほかのページをめくっていたら「NO.1」という開始の声。もうパニック状態で、1番から3番くらいまでは耳を通り抜けた。その後、信じられないくらい長い会話があり、「いつ終わるのかな」などと余計なことを考えていて数行聞き逃し、答えも適当だったが、なにせ会話の最初の方など覚えていない。これも訓練が必要だと反省。

 通知が来たとき「合格」という字を確認しただけで捨ててしまった。教師ともあろう者が情けないが、リスニングの点など見たくもなかったのは本当です。

 面接当日は、試験場の入口で、英語学校の職員がパンフレットを配布していた。1級面接に合格した生徒たちの体験談を読んだら、ほとんどが「一度目は、面接官の前で頭の中が真っ白になり、一言も出てこなかった」と書いていた。

 私など、面接で、頭の中が真っ白になる経験など、屁とも(失礼)思わない。海外で生活するということは、そんな甘いものではないのです。頭の中が真っ白になったってしゃべらなきゃあならない。そんな生活を、10年以上毎日やってきたのだから、心臓に毛が生えているようなもので、「時間ですからやめてください」といわれるまでしゃべってきた。当然合格だったが結果の詳細は見ていない。しゃべった内容など思い出すのもおっくうだし、1度しゃべったことは苦にしない、という習慣も海外生活で自然と身に付いたことだ。

 今回の試験は、受ける側の心理が分かって大変良い経験だった。しかし、結果は不満足で、次回、再度受けることにした。それ以上に、語いの定着やリスニングの強化に役立つと確信したからだが、家族は、「何もそこまでやらなくても」とあきれている。

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