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小さな英語教室

By Yuri Kiba / キバ・ユリ

オーストラリア人の夫と結婚し、シドニー在住歴24年の筆者が、学校とは離れた教育の場で、子供たちを見ていて感じたこと、考えさせられたことを紹介するコラムです。
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Yuri Kiba / キバ・ユリ

Vol. 76 : 英検と学校の試験対策のジレンマ

 英検の効用について前回書いたが、次のような情報を下さった方がいらした。

「実は昨年、今年と英検実施団体の広報を取材する機会がありました。60年生まれの私にとり、英検はどうも学校くさい内向きのテストで、TOEICやTOEFLのように「外を意識した」テストと比べ、実践力を測る上では若干見劣りのする印象がありました。そして、この3月には文科省の認定も外され、少子化の中、かなり厳しい時代を迎えるのではないかと思っておりました。

ところが…

 実社会に、または海外留学に望んだ場合、重視されるのは発信型の技能、すなわち会話力と作文力であって、受信型のリスニングとリーディングではないわけです(後者はつまり、入試で必要な技能なわけですね)。ビジネス英語の力を測るテストであるTOEICがスピーキングとライティングのテストを最近始めたのは、その意味で象徴的なことでした(TOEICではここ数年、社会人受験者数の減が問題になっていました)。

 英検は実施当初からスピーキングのテストを実施しており、4技能をバランスよく学習することの大切さをうたってきました。そのへんをまず海外の大学が認め始めました。授業でよく発言する学生たちを調べたら、多くが「EIKEN」という試験を受けていた、というわけで、留学に必要な語学力の要件として、「EIKEN」を認める大学がオーストラリア、米国で増えています。また、ホテルやレストラン業界 − つまりお客さんと直接コンタクトせざるを得ない仕事をする現場で、会話力と作文力も試される英検の見直しが始まり、1級、準1級の受験者に、社会人が増えつつあるというのです。細かいことまでは触れませんが(いや、よく分かりませんが)、試験内容もかなり慎重に練られているようです。

 試験問題の持ち帰りがOKなのも英検くらいで、つまり持ち帰って(正解はウェブで示すので)復習しなさい、テストは学習の一つのプロセスに過ぎない、というわけです」

 この情報は英検に重点を置いてきた私には朗報だった。うれしかった。しかし、誤解しないでいただきたい。英検を狂信的に信仰して学校の英語教育を軽視しているのではない。学校であれだけ丁寧に教えている文法を、利用しない方法はない。私の英語教室で、3級や準2級まで進んだ小学生たちが、中学校に入って文法を教わり「ああ、そうだったのか〜」と、今まで習った小難しい文章に新しい法則を発見してくれたら素晴らしいと思うのだ。

ところが…。

 そのような興奮を覚えて好成績を取る生徒は非常に少ない。授業が面白くないというのが大まかな理由のようで、帰国子女の場合、先生をさげすんでいる場合もあるが、全体的に共通しているのは、重箱の隅をつつくような試験に、方向を見失っていることだ。事情は理解していて同情はするが、その芳しくない成績は、こちらの肩にかかってくるので嫌になる。

 それは、学校の試験対策をやってくれという親からの要望であり、一体何のための学校かと腹が立つ。しかし、私は、学校対策は基本的にはやらない。授業を受けていないのだから試験のヤマが当たるはずがない。一度、せっぱ詰った中2の生徒の学校対策を2ヵ月間個人的にやったが、予期もしない歌詞が試験に出て、それ以来ご辞退申し上げている。

 また、中学へ入る準備として、小学生に文法を教えてくれという親もいる。しかし、小学生は文法の思考回路が確立していないから、いくら説明しても理解もできなければ定着もしない。主語・動詞・不定詞などという文法用語は彼らには一切通用しない。しかし、一応の法則を教えなければ先に進まないから、動詞を「動く言葉」などと自前の用語を使って「『〇〇は』(主語)の後には『動く言葉』がくる」とか「have の後は、一風変わった言葉が入るよ(完了形)」などと教えている。一応納得するが、法則として定着しないのが小学生だ。基本文型や語いの反復、または物語などを取り入れたりする以外にやりようがない。しかし逆に、適性のある子は面白いように覚えるので、教え甲斐があるのもこの年齢である。

 少数ではあるが英検も学校の成績もずば抜けて良い中学生もいる。一人は、九段中学(公立)の担当英語教師が大変優秀で、先生に魅了されて英語劇クラブに入っていたT君。図体が大きく、柔道部がメインだった。中1で教え始めたが、3級から準2級へと順調に進み、翌年、2級に合格。学校の成績も抜群だった。あと一人は、学校(私立)の英語教師には不満たらたらだったが、バレーに週4日・クラブ活動に週3日・私の英語教室週1回という超過密スケジュールの中で時間を有効に使う訓練ができていたMちゃん。ほかの科目の成績も良いが、英語は好きで、過密スケジュールの中、予選を経て東京都の英語スピーチコンテストにも臨んだりしている。この4月に高1になり、今、準1級をやっている。今年中には受かるだろう。

 まあ、この話になるとページがいくらあっても足りないので、また次回。

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