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カズの取材日記

By Kaz Nagatsuka / 永塚 和志

スポーツ記者、永塚和志が取材を通じて遭遇した様々な出来事・人々について語るエッセイです。
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Vol. 4 : Kazmanian Devil's 取材日記

 よし! 真面目な話をしようではないか! と、やや値段の上がった第3のビールを片手に、このコラムを今書いている。

 過去3回のコラムではいずれもWBCについて書いてきたが、ちょっと遊びすぎた感もあるので、ここでやはり本来のスポーツに関わる者らしい内容の事柄を書こうと思う。ちなみに、僕はこのコラムはたいてい深夜に書いている。よく好きな子に熱いラブレターを夜中に書いて、次の日にそれをもう一度読んでみるとえらくはずかしく感じるというが、僕も自分のコラムには同じようなことを感じてしまっている。でもいつもめんどくさいから、そのまま載せてはいるけど。

 今回のWBCでの優勝によって、日本の野球と選手のレベルの高さが証明されたことは間違いないところだろう(日本は運が良かったなんてほざいてるどこかの国のメディアの諸君、往生際が悪いよ)。1995年の野茂英雄(現シカゴ・ホワイトソックス傘下)以来、毎年日本のトップ選手が大リーグへ渡り活躍してきた。野茂以降では、佐々木主浩(元シアトル・マリナーズ)、イチロー(マリナーズ)、松井秀喜(ニューヨーク・ヤンキース)などは特に日本人としてという以前に一選手としてアメリカで堂々と力を発揮している。ただ、今回のWBCで活躍した日本選手たちは、個々の技量もさることながらチームの勝利を最優先にしたところが見事だった。アメリカではホームランを量産するスラッガーがやはりスター扱いされる傾向が強い(薬の力を借りてまでもパワーにこだわるあたりはそれを示している)が、ホームランを打たずとも野球は勝てるんだぞというところを日本は見せたのだ。

KAZMANIAN DEVIL'S WBC 取材日記
 大リーグでも昨年、シカゴ・ホワイトソックスがスラッガーに頼らない野球でワールドチャンピオン(すでにこの称号もWBC王者に与えられるべきものとなりつつある)となったが、国代表チームとはいえ、今回の日本チームの野球はその、いわゆる「スモールベースボール」をさらに突き詰めたものだった。日本だけではない。日本を散々苦しめ、実際に2勝をもぎ取った韓国も同じように、投手力重視の守り勝つ野球だった。韓国の場合は、33番・李承Y(読売ジャイアンツ)こそ驚異的だったとはいえ、全体的な打撃力はそれほどでもなかった。しかし朴贊浩(サンディエゴ・パドレス)など、大リーグで活躍する投手6人を代表入りさせ、相手に点を与えない試合運びに徹底し、それが功を奏した。日本も上原浩治(ジャイアンツ)、松坂大輔(西武ライオンズ)、渡辺俊介(千葉ロッテマリーンズ)という先発陣を中心とした投手の力に負うところが大きかった。スラッガーがいなくとも勝てるというのは、象徴的なところで全試合を通じて4番を打った松中信彦(福岡ソフトバンクホークス)のWBCで本塁打がゼロだったところに表れている。その代わり松中は.433という高打率を残し、大会最多安打(13)もマークした。また、2次ラウンドまでは松中の前を打つ3番に、多村仁(横浜ベイスターズ)や福留孝介(中日ドラゴンズ)ら日本では比較的長打の多い選手を起用してきながら、準決勝以降は1番だったイチローを3番に入れたことにより、それまでよりもずっと打線につながりがでたことは、読者の方々も覚えておられることだろう。

 余談になるが、僕はイチローがラインアップの3番に名を連ねるのを見て、彼のオリックスブルーウェーブ(現バッファローズ)時代を思い出した。年間210安打のプロ野球記録を樹立した94年当初はイチローは1番を打っていたが、やがて勝負強さを買われて当時の監督、故・仰木彬氏はイチローを3番やときには4番で使い出したことを思い出した。95年、96年とオリックスは2年連続で日本シリーズに進出した(95年はヤクルトスワローズに敗退、96年はジャイアンツを破って優勝)が、そのころのイチローは3番を打つことがほとんどだった。4番にはトロイ・ニールという大砲がいたが、当時のオリックスも投手力とイチローや田口聡(現セントルイス・カージナルス)らの鉄壁の守備力を中心とし、スモールベースボールを展開していたように思う。

 話は戻る。僕はアナハイムで、アメリカ代表チーム監督のバック・マルティネスに日本や韓国の野球についてインタビューを試みた。マルティネスは驚くほど日本や韓国をはじめとするアジアの野球に感心していたのが印象的だった。

"I think mid-infielders, Kawasaki and Nishioka are major-league caliber players, when they get a little bit older and stronger and rely more on speed effectively. I had not known that Nishioka had more power at right-handed, although I knew he was a converted switch hitter. I think he is a very exciting player and seems very smart. I think Matsunaka is a quality hitter with a lot of power. And I like Iwamura is a very good player. He's a very good fielder, looks like very smart, good glove, very confident.
<二遊間の川崎(宗則、福岡ソフトバンクホークス)と西岡(剛、千葉ロッテマリーンズ)は、もう少し経験を積んで、パワーをつけて、そしてもっとスピードを効果的に使えるようになれば、大リーグでプレーできると思うよ。西岡については、彼が途中からスイッチヒッターに転向したのは知っていたが、右のほうがあんなにパワーがあるとは思わなかった。彼はとてもエキサイティングな選手だし、頭も良いね。松中(信彦、福岡ソフトバンク)はパワーがあるのに当てるのもうまい。岩村(明憲、東京ヤクルトスワローズ)も良い選手だしね。岩村は守備も良いし、スマートなプレーをする。それに自信を持ってる>

"And also, everybody likes Matsuzaka and thinks he can pitch in the major leagues very soon. Uehara is a good pitcher, too. He throws a little bit harder than we thought. He has good control and knows how to pitch, and I was very impressed with him as well. But I think for Ameircan scouts or those who look through Japanese baseball, when they look to find another top-flight pitcher like Nomo, that would be Matsuzaka.
<あとは、松坂(大輔、西武ライオンズ投手)だね。彼はすぐにでも大リーグでプレーできるよ。上原も良いね。彼はわれわれが思っていたよりも速い球を投げるね。コントロールもあるし、ピッチングをよく理解している。でもまあ、野茂以降日本の選手を見続けているアメリカのスカウト連中にとって、今一番注目しているのは松坂だろうね>

"The overall Japanese players are outstanding because they are fundamentally sound. And if they add speed of like Nishioka or Kawasaki, they are major-league caliber players. They don't have the power that used to be important. But it's not important any more. I think there is a trend away from power to speed, execution and more fundamentals. I think Japanese players do all those things very well. So when you look at Tadahito Iguchi, what he does at bat and how he handles the bat, everybody understands he's a very good player, a smart player. I think he learned a lot from Mr. Oh. I talked with Iguchi last year about how he has become as a hitter and it didn't take long to make him comfortable in the major leagues. Matsui has now become one of the best hitters in the league after three years. He now understands sinker balls, something he wasn't familiar with and he knows how to hit it. Joe Torre has a lot of confidence in Matsui.
<全体的に日本の選手はすばらしい。特に基本ができているからね。そこに西岡や川崎のようなスピードがあれば、大リーグでプレーすることは不可能じゃない。日本人にはパワーが足りないけど、今はもうパワーはそれほど重要じゃない。今はパワーよりもスピードや、チームプレー、基本なんかのほうが重視されるからね。日本人はそのどれも持っている。井口資仁(ホワイトソックス)を見てみなよ。彼はバッティングで打ち分けることができる。とてもスマートな良い選手だよ。私が思うに、彼は王監督からたくさんのことを学んだんだろうな。去年、私は井口と話す機会があったんだけど、彼は大リーグに適応するのに時間はかからなかったようだ。松井(秀喜、ニューヨーク・ヤンキース)は大リーグ4年目にして今やトップの選手の一人だ。松井は、最初はシンカーに苦しんだが今はもうそんなことはないしね。(ヤンキース監督の)ジョー・トーレも松井を信頼してるのが分かるよ>

"I think the Korean team has opened our eyes with the talented players they have, especially in the bullpen. We saw some good bullpen pitchers. In the major leagues, it's hard to find a good left-handed bullpen pitcher but they have plenty of them. And their shortstop player (Park Jun Man) is a very good player. He doesn't make too many mistakes. Of course, Lee (Seung Yeop) has got a lot of power. And I like Oh (Seung Huan). Oh is a very good pitcher, too. I think he's got a chance to be a major-legue pitcher."
<韓国のチームも優れた選手が多く、我々の眼を見張ったね。特に彼らのブルペン投手陣には驚いたよ。大リーグでは、ブルペンに優れた左投手はあまりいないんだけど、韓国にはたくさんいるね。ショートの選手(朴鎮萬)もミスを犯さない良い選手だね。もちろん李承Yはパワーがあってすばらしい。呉昇桓(投手)もいいなあ。彼は大リーグでプレーできるよ>

 と、こんな風にベタぼめなのだ。ちなみにこのインタビューは、日本の準決勝進出がかかったアメリカ対メキシコ戦の直前に行なった。試合前にも関わらず快くインタビューに答えてくれたマルティネス監督。日本戦でボブ・デービッドソン審判が判定を覆し、マルティネス監督はベンチ前で派手なガッツポーズをした。そのときは腹が立って、できることなら片足タックルからテイクダウンしてサイドポジションからのヒザ蹴りでもお見舞いしてやりたいくらいだったが、こうして話してみるととても感じの良いオッサンだった。やはり根っからの悪人というのはいないんだな、と思った。

 このインタビューは2次ラウンド1組最終戦のアメリカ対メキシコの試合前に行なった。そう、この試合でメキシコがアメリカを2-1で破り、日本が失点率の差で準決勝進出を決めたあの試合だ。

 メキシコが勝利した直後も、まだ日本が準決勝に行けるかどうかはすぐには分からなかった。僕はかたずをのんでプレスボックスで待っていた。すると、"Japan advances to the semifinals."(日本が準決勝に進出します)というアナウンスが流れた。もう日本が次のラウンドへ行くのは無理だなと思っていただけに、まさかの逆転ホームランである。

 「フォー!」。別にハードゲイになったわけではない。一応記者だし、プレスボックスにいるわけだから、それまでは日本が試合に勝ったり、選手がヒットを打ったりしても冷静なフリをしていたが、このときばかりは僕は自分を抑えることができなかった。思わず奇声を発してしまったのだ。

 その瞬間周りにいたアメリカ人記者たちにジロリとにらまれてしまった。でも勝っちまえばこっちのもんだ。こころでそう開き直り僕はガッツポーズをした。そしてそのアメリカ人たちには聞こえないことをいいことに、「ざまあみろ……」と僕はつぶやきながら足取りも軽く試合後の会見へ向かったのである。


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