まず、第一回目の今回の言葉はat the helmです。helmとは船の舵のこと。つまり、at the helmは「舵を取るポジションにいる」ことを意味します。舵取りはその船の全権を握ります。舵取りのハンドリングひとつで船の行き先が決まるからです。そのことから、この言葉は「支配権を握る」とか「権限を持つ」、「リーダーとしての役割を担う」という意味を持つようになったのです。
helmという単語からもわかるように、at the helmはセーリングが語源の言葉です。しかし、今ではセーリング用語という枠を超えて、一般によく使われるイディオムなのです。
He is at the helm of the project. という例文を考えてみましょう。これは、「彼がそのプロジェクトの最高責任者である」という意味になります。「彼がそのプロジェクトの全権を握る」と訳してもいいでしょう。それでは次の文はどう訳しますか?
When he was at the helm of the Orix BlueWave from 1993 to 2001, Akira Ogi led the BlueWave to the Japan Series championship in 1996.
これは今季からオリックス・バッファローズの監督に就任した仰木彬氏のプロフィールを紹介する一文です。「仰木彬氏は1993年から2001年までオリックス・ブルーウェーブの監督を務め、96年には日本シリーズ優勝に導いた」という内容です。この場合のat the helmを僕は「監督」と訳します。なぜなら、文章の内容から言ってチーム最高責任者=監督であることは歴然だからです。
逆にこの文章を日本語から英語に訳すときのことを考えてみましょう。野球で言う監督は英語で「manager」と訳すのが普通です。だから、先の文はWhen he (=Ogi) was manager of the Orix BlueWave…と書けば正解です。でも、ちょっとベタな英語だな、と感じます。そこで、manager(監督の意味で使う場合には冠詞はつきません)のところをat the helmとすると、カッコいい英語になるのです。ぜひ、お試しあれ。
さて、今回は連載第一回目なのでおまけをひとつ。Athlete's footとはどういう意味でしょう?ヒントは春先になるとかゆさに悩まされるあの病気です。昔はオヤジの専売特許だったものですが、最近では若い女の子にも多いのだとか…正解は来週のこのコラムで。
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