英単語のなかで最も少ないのがQまたはZで始まる言葉です。お手持ちの辞書ではQがPと、ZにいたってはX・Yと一緒にされて収録されているものもあるでしょう。スポーツ用語も例外ではなく、Qで始まる言葉は極端に少ないのです。弱った!
「困ったときは得意分野で」というのが14年間の社会人生活で僕が学んだ教訓の一つ。そこで、今回はアメリカンフットボールからの出展です。
アメフトをよくご存知でない方でも、Quarterbackというポジションは耳にしたことがあるのではないでしょうか。Quarterback(QBと略されます)とは、アメフトでボールを投げるポジションのことです。ラグビーで言うならスクラムハーフ、野球ならピッチャーとキャッチャーを合わせたような役割を持つ選手です。
QBはアメフトの花形と言われます。プレーが始まる前にチームメートに指示を出し、華麗にパスを決めるポジションだからです。アメフトを志す人なら一度は夢見るポジションです。僕もそうでした。でも、たいていの人はパスがうまく投げられずに挫折し、ほかのポジションにコンバートさせられます。僕もそうでした・・・・(泣)。
さて、アメフトはアメリカの国技とも言われるだけあって、生活に密着したスポーツなのです。映画で主人公の男の子がやっているスポーツといえばアメフト。ヒロインが憧れる相手の男の子は学校のアメフトのスーパースターというのがお決まりの設定です。それだけに、アメフトの言葉が日常生活で使われることがとても多いのです。
Quarterbackを動詞として使うのがその一例です。この場合の意味は「リーダーとして物事を運営する」という意味になります。例えば、
He was chosen to quarterback the new project.
と書けば、「彼は新しいプロジェクトのリーダーに選出された」という意味になります。
アメフトでのQBの最も重要な役割は、ゲームの状況を正確に判断し、そのときに最も有効だと思われるプレーを考えてそれを実行することです。判断力、冷静さ、決断力が問われます。それゆえ、QBはチームの司令塔であるなどという言い方もされるのです。
Quarterbackを動詞で使う場合、まさに上記のような役割を担ったリーダーを想定します。
もっとも、実際に昨今のフットボールでは状況判断とプレー選択はベンチにいるヘッドコーチの仕事で、QBがそれを要求されることはほとんどありません。現代アメフトは戦術が高度化しており、QBに頭脳的プレーの全てを任せるのは不可能だからです。QBはベンチにいるコーチからのサインで指示されたプレーをほかのチームメートに伝え、それをゲームの中で忠実に実行するのが役割とされます。
以前にも別のコラムで紹介しましたが、Monday Morning Quarterbackという言葉があります。これは、「後からとやかく言う人」というネガティブな意味に使われます。アメリカでは週末にアメフトの試合が行われるのが普通で、月曜日になって「あそこはこうするべきだった」、「あのプレーはよくなかった」などと言い出すとただの愚痴になってしまうのです。
会社でも学校でも、何かの責任者に任命されてアメフトのQBよろしく張り切るのは大いに結構なこと。でも、あとから愚痴をこぼすMonday Night Quarterbackにはなりたくないものです。
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