ベースボールのMLB、バスケットボールのNBA、アメリカンフットボールのNFL、そして、アイスホッケーのNHLを北米4大スポーツリーグといいます。新聞によってはアメリカ4大スポーツと呼ぶものもありますが、上記4つのプロリーグの中でNFLを除いて全てにカナダのチームが所属していることから、やはりアメリカだけではなく、北アメリカ大陸のスポーツリーグと呼ぶのが正しいと思います。
さて、この4大スポーツリーグに共通しているものの一つにプレーオフシステムを導入していることが挙げられます。レギュラーシーズンが終わったあと、成績の良かった上位チームだけでトーナメント方式(負けたチームが脱落していくことから、ノックアウト方式とも言います)で戦い、優勝チームを決めるのがプレーオフです。日本では昨年から野球のパシフィックリーグがこの方式を採用しています。
現在、ファイナルズの熱戦が繰り広げられているNBAを例にとりましょう。計30チームからなるNBAは15チームずつがイースタン・ウェスタンカンファレンスに分かれ、その中でさらに5チームずつ、3つのディビジョンに分割されています。
NBAのプレーオフには計6つのディビジョン優勝チームに加え、それぞれのカンファレンスでディビジョン優勝チームを除いた中から成績の良かった上位5チームがプレーオフに駒を進めます。NBAでは計16チームがプレーオフに進出することになりますが、ディビジョン優勝以外の10チームは「Wildcard」もしくは「Wildcard team(s)」と呼ばれます。
ディビジョン優勝チーム以外にワイルドカードチームがプレーオフに参戦するのは4大スポーツ全てに共通しているシステムです。また、テニスなどの大会で、本来なら予選を通過しなければ本戦には出場できないのですが、開催国の推薦枠で特別に出場が認められる選手がいます。この選手もWildcardと呼びます。
Wildcardとは日本語でなかなか説明しにくい言葉なのですが、「特別枠」、「推薦枠」といった意味があります。くだけた言い方をすれば「隠し玉」といったところでしょうか。
「本来ならば出場資格を持たないが、特別枠として権利を与えられた選手やチーム」というのがスポーツ用語としてのWildcardの意味です。日常生活では何か得体の知れない密かな実力を持っていたり、全く注目を浴びずにノーマークだった人物を指すときに使われます。
さて、このWildcard。スポーツの世界ではプレーオフを面白くしてくれる重要な存在になることが少なくありません。プレーオフではワイルドカードチームは一般的にディビジョン優勝チームよりも低いシード順位が与えられます。トーナメントではトップシードと対戦するのは当たり前。アメリカンフットボールではアウェイで試合をさせられます。しかし、このワイルドカードが優勝候補を破ってしまうから面白い。まさにWild(荒れた)結果をもたらすCard(切り札)なのです。
長いシーズンを通して安定したチームが優勝するのは当たり前のことです。しかし、北米4大スポーツのように30前後ものチームが所属するリーグではシーズンの終盤に調子を上げて勝ち星を重ねるチームもあります。これらのチームは勢いがピークにあるときにシーズンが終わってしまうことになります。こういったチームにもチャンスを与えようというのがワイルドカードのシステムなのです。勢いに乗っているから、シーズン中の成績で上位だったチームを破ってしまうことも珍しくはないのです。
日本でも昨年のパ・リーグは、シーズン中の成績が2位だった西武が1位のダイエー(現ソフトバンク)をプレーオフで破ってリーグ優勝を果たし、その勢いで中日を倒して日本一に輝きました。独自のカラーを出して人気の高いセ・リーグに対抗しようとしたパ・リーグの狙いは当たりました。しかし、僕自身はワイルドカードシステムは日本のプロ野球にはなじまないような気がします。チーム数が少ないからです。MLBではリーグごとに3つのディビジョン優勝チームとワイルドカード1チームがプレーオフに進みます。しかし、計30チームからなるMLBだからこそ様になるので、わずか6チームしかないパ・リーグ単体でこのシステムを導入するのは無理があるような気がします。皆さんはどう思いますか。
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