Aから順番に紹介してきた「日常生活に見るスポーツ英語」も、今回がついにアルファベット最後のZです。これまでいろんなスポーツ用語を取り上げてきましたが、今回は射撃に語源を持つイディオム、zero in onの紹介です。
Zero in on 〜とは「〜に集中する」という意味で、別の英語に置き換えればfocusonとなります。射撃で射撃手はライフル銃の照準スコープから的をのぞき、狙いを一点に集中させます。
もともとzero inには「メモリをあわせる」という意味があって、それに「一点に集約する」という意味合いを持つ前置詞onを結びつけることによって「的の中心にメモリを合わせる」、すなわち「的に狙いを定める」という意味が生まれます。それが日常生活では「物事に集中する、注意を傾ける」と比ゆ的に使われるようになったのです。
僕はアメリカに留学していた学生時代にクレー射撃をしたことがあります。僕が経験したのは競技用のクレー射撃ではなくレジャー用のもので、直径15センチくらいの粘土製の円盤を空中に投げ、それをゴム弾のライフル銃で撃つというものでした。
最初は銃口を地面に向けていて、クレーが投げられた瞬間に銃口を持ち上げ、照準で空中のクレーを追います。クレーを狙うコツというのがあって、このタイミングをつかむか否かで成績が大きく変わります。クレーは最初、上昇軌道を描きますが、下降軌道に移る際にほんの一瞬だけ静止するかのように見えます。この瞬間を狙うのです。クレーの軌道を読み、静止の瞬間を捉え、引き金を引いてからゴム弾がクレーに達するまでの時間を計算しながら照準をのぞきます。レジャーでありながら、かなりの集中力を要するスポーツです。
じっとスコープをのぞき込み、的を静かに狙う射撃手の姿はまさに集中力を象徴的に表しています。実にい得て妙だなと思うスポーツ英語です。
ところで、的の中心にある黒い点はある動物の体の一部をとって名づけられていますが、なんだかわかりますか?答はbull's eye(雄牛の目)です。このbull's eyeも日常生活でよく耳にする言葉です。「的の中心」を表す言葉ですから、転じて話題の核心に触れたり、正解を突き止めたりしたときに会話でよく使われます。そのままBull's eye!と使って、場面によっては「その通り」という意味になったり、「正解」、「よくやった」などと解釈されたりします。日本語でも「的を射る」という言葉がありますね。ニュアンスはまさにこれと同じだと考えていいでしょう。
さて、次回は番外編をお送りします。日本語の中でもスポーツから派生して日常生活で使われている言葉がいくつもあります。それをご紹介しましょう。
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