"Talent wins games, but teamwork and intelligence wins championships."
(マイケル・ジョーダン)
チームスポーツにおいて、試合に勝つために必要なのは個々の選手の能力が高いことなのか、またはチームワークなのかというのは議論が分かれます。
確かに強いチームを作るには能力の高い選手を揃えることが不可欠です。しかし、現実にはスター選手を集めたMLBのニューヨーク・ヤンキースや読売ジャイアンツが常に優勝している訳ではありません。むしろ、今年のワールドシリーズを制したホワイトソックスや日本シリーズで圧倒的な強さを見せた千葉ロッテ・マリーンズなどは有名選手を揃えたというよりは、チーム全体がまとまった強さを発揮したといった方が適切でしょう。チームとしてのまとまりがタレント集団を凌駕(りょうが)する場面は個人スポーツにはないチームスポーツの醍醐味の一つでもあります。
NBAやNFLではサラリーキャップ制と呼ばれる総年俸制現制度が採用されています。チームが年間に支払うことのできる年報の合計額がリーグで決められているのです。このため、実力があり、年俸の高い選手ばかり集めるといったチーム作りは事実上不可能です。ここには、できるだけ個々のチームの実力を拮抗させ、それによってリーグ全体を興味深いものにしようといった狙いがあります。このルールがあるために優勝チームは毎年のように替わり、下位チームが上位チームを破るといった大番狂わせも生じるのです。
今日のプロスポーツでは年俸上の制限下でいかに強いチームを作っていくかが各チームの首脳陣が最も頭を悩ませる重要事項です。NFLで現在スーパーボウルを2連覇中のニューイングランド・ペイトリオッツは他の球団から戦力外通告を受けた選手を安い年俸で獲得し、徹底的に鍛え上げることで常勝チームを作り上げました。こういった例を見ると選手の能力よりもチームワークが大切なのだと思い知らされます。
アメリカンフットボールでは、チームワークのことを特にchemistry(化学変化)という言葉で表現することがあります。攻守合わせて22個のポジションがあるフットボールではチーム全体がユニットとしてまとまることが何よりも重要だとされます。個人レベルで能力の高い選手を数人保有しているよりも、チームの方針に合致した能力を持つ選手を多数持っている方がチームとしては強くなるのがフットボールというスポーツの特性です。Chemistry とはなるほど、言い得て妙ですよね。
マイケル・ジョーダンについては以前に触れました。NBA史上最も偉大なスーパースターとさえ言われる名選手でした。彼は能力の高い選手を集めさえすればいくつかの試合に勝利することができる。しかし、優勝するためにはチームワークと頭脳が必要なのだと説きます。個人能力が誰よりも秀でていたジョーダンの発言だからこそ、説得力を持つ言葉となっているのです。
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