"It just isn't talent, it isn't physical ability, but that spirit makes a great difference in whether you win or lose."
(アメリカ第37代大統領 リチャード・ニクソン)
政治家の中にもスポーツ愛好家が多くいるようです。つい先日に千秋楽を迎えた大相撲九州場所では、小泉純一郎首相が会場で観戦する姿も見られました。小泉首相と言えば、2001年の夏場所で膝の負傷を押して強行出場し、武蔵丸を破って優勝した貴乃花に投げかけた「感動した!おめでとう!」のセリフが有名ですね。
アメリカでは第37代大統領のリチャード・ニクソン(1913〜1994)がスポーツ好きで有名でした。スポーツにまつわる数々の名言も残しています。そのひとつがこれです。
ニクソンの名言には「精神」や「意思」といった言葉が多く見られます。標題の言葉でも精神の重要さが語られています。彼は勝敗を分けるものは才能でもなく、身体能力でもなく、精神力であると説きます。
スポーツでは精神の大切さを説く指導者が少なくありません。しかし、彼らの指導を受ける選手はいわゆるこの精神論をあまり好まない傾向があります。僕自身もそうでした。大学時代に精神論ばかり言うコーチには反発し、「そんなことより、強くなるテクニックや戦術を指導してほしい」などと思ったものでした。
この仕事を始めて、いろんな指導者と話をする機会がたくさんありました。チームを優勝に導いた監督やコーチらがどんな戦術を持ち、どんなテクニックを教えているのだろうということに僕は興味を覚えました。ところが、驚いたことに、リーグ制覇などの偉業をなした指導者ほど精神の大切さを強調するのです。
あるチームのコーチは言いました。「テクニックは教えることができる。戦術も持っている。しかし、精神力だけは選手自身が育てるもので、僕らが指導して芽生えるものではない。そして、試合で最後にものを言うのはこの精神力なんです」と。
まさに、ニクソンの言葉と合致します。
練習ではいいプレーをするのに試合になると全く実力が出せない選手というのはたくさんいます。そんな中で、90年代ごろから「メンタルトレーニング」という指導方法が広く用いられるようになりました。つまり、テクニックを習得し、体力をつけるトレーニングと同様に、プレッシャーをはねのける精神的な強さを専門家の指導によって身に付けようというものです。オリンピック選手には今でも多くメンタルトレーニングを採用している人がいます。
そんなメンタルトレーニングも昨今では、水泳の北島康介選手のように「プレッシャーそのものを楽しむ」という若いアスリートたちがたくさん出てきて、手法そのものにも変化が訪れているようです。
ニクソンと言えば、なんとNFLのヘッドコーチにプレーのアドバイスをしたというエピソードがあります。1972年のことですが、NFLの王座決定戦であるスーパーボウルの直前にあるチームのヘッドコーチに電話を入れ、作戦を指示したと言われます。そのアドバイスの甲斐もなく、そのチームはその年のスーパーボウルに敗れてしまいますが、ヘッドコーチにしてはありがた迷惑な話だったかもしれません。ちなみに、そのアドバイスを受けたヘッドコーチは NFLで史上最多勝利を誇る名将ドン・シュラです。
|