スポーツ選手のニックネーム(前編)
ニューヨーク・ヤンキースの松井秀喜選手のニックネームが「ゴジラ」だということは皆さんよくご存知ですね。有名なスポーツ選手にはその人の特徴を見事に言い表したニックネームが付き物です。選手の風ぼうから付けられたものもあれば、選手にまつわるエピソードがそのまま「異名」として定着した例もあります。ニックネームは選手が発する名言と同じくらいの妙味があるものです。今回と次回は名言集の番外編として、著名な選手のニックネームをご紹介します。ちなみに、松井選手はゴジラ以外のニックネームを付けるとしたら、「ウルトラマン」がいいのだそうです。
松井選手と同じヤンキースに在籍するランディ・ジョンソン投手は「ザ・ビッグ・ユニット(The Big Unit)」と呼ばれます。彼の活躍した記事の見出しにこのニックネームを 見たことがある人も多いでしょう。このニックネームは彼の2メートル8センチという身長の高さから来ています。彼がMLBで初登板を迎えたときにチームメートがあまりの背の高さに「でかいなあ」という感想を"That's one big unit!"と言ったことが由来だとされています。ジョンソンは剛速球で数々の賞を獲得してきた現代のMLB最高の投手の一人です。たまたま飛んできた鳩に彼の投球が当たって死んでしまい、動物愛護団体から訴えられたという面白いエピソードを持っています。
同じくMLBでは「シューレス(Shoeless)」と呼ばれたジョー・ジャクソンも有名です。1910年代にシカゴ・ホワイトソックスで活躍した好打者でした。MLBに昇格する前のマイナーリーグで裸足でプレーしていたことからこのあだ名がつきました。ところが、1919年のワールドシリーズで八百長に加わったとして球界を永久追放されました。今年のホワイトソックスのワールドシリーズ優勝は、このときの悪評を86年の月日を経て払拭したものだったのです。
昨年限りでNBAを引退したカール・マローンは通算得点でNBA歴代2位にランクされている名選手です。彼のあだ名は「メールマン(The Mailman)」。それは、巧みなボールさばきで見事なパスをチームメートに回したからです。このニックネームは深読みをすると郵便局の休みである週末には活躍できないという意味にもとれます。というのも、マローンはレギュラーシーズンゲームにはめっぽう強かったものの、NBAファイナルではなかなか勝利に恵まれなかったからです。NBAのプレーオフの多くは週末に行なわれますから、アンチ・マローンのバスケットボールファンの中はNBAファイナルでなかなか勝てない彼をやゆする意味でこのニックネームを使う人もいるのだとか。
NFLでは「ブロードウェイ・ジョー(Broadway Joe)」と呼ばれた選手がいました。本名はジョー・ネイマスといい、60年代にニューヨーク・ジェッツで活躍したQBです。ニックネームの由来は彼の派手な言動でした。毛皮のコートを身にまとい、歯に衣着せぬ発言で常にメディアの注目の的でした。彼が第3回のスーパーボウルに出場したとき、なんとメディアとのインタービューをビーチで、しかも周りにたくさんのブロンド美女をはべらせて行なったのです。そのときの試合前の予想では対戦相手のコルツの圧倒的有利が言われていました。これに対しネイマスは「ジェッツが勝つに決まっている。保証してもいい」と大言壮語したのです。メディアはこぞって彼の大口を批判しました。しかし、試合ではネイマスが大活躍をし、大方の予想を見事に破って優勝したのです。今年で40回目を迎えるスーパーボウルですが、今でも語り草となっている大番狂わせの大会の主役となったのがブロードウェイ・ジョーでした。
|