"They were four great games — unless you're an Astros fan."
(ヒューストン・アストロズ クレイグ・ビッジオ二塁手)
スポーツで勝者がいれば敗者もいるというのは当たり前の事実です。勝者にはシーズンが終わったあとも優勝の余韻に浸り、さまざまな称賛を得る資格が備わります。敗者は全く逆の立場。負けた悔しさはオフのみならず、次に優勝のチャンスが巡ってくるまで引きずってしまうものです。
今年のMLBはシカゴ・ホワイトソックスが88年ぶりにワールドシリーズで優勝しました。前回の優勝からブランクが空けば空くほど盛り上がるのもスポーツの常(千葉ロッテ・マリーンズの39年ぶりの優勝も記憶に新しいところですね)で、シカゴの街はホワイトソックス優勝に大いに沸きました。さらにNFLのベアーズも地区優勝を決めて4年ぶりのプレーオフ進出を決めるなど、シカゴは今アメリカで最もホットなスポーツタウンの一つです。
ホワイトソックスはナショナルリーグ代表のヒューストン・アストロズに対して1勝も許さず、7回戦制のワールドシリーズをたったの4試合で終わらせてしまいました。そういえば、マリーンズも阪神タイガースに対して4タテ(英語ではsweepという単語を使います)でした。
つらいのは負けたアストロズとそのファンです。それをうまく言い表したのが標題の言葉です。Unlessとはif notの意味ですから、後半は「アストロズのファンでなければ」という 意味になります。前半でワールドシリーズの熱戦を称えておきながら、後半でオチをつけたところにこの言葉の味わいがあります。
MLBではアメリカン、ナショナル両リーグがそれぞれ3地区に分かれており、地区の優勝チームと、それに次ぐ勝率を挙げた1チームがプレーオフに進出します。MLBでは地区優勝というのはプレーオフの出場権に過ぎません。MLBのチームにとって意味を持つのはプレーオフで勝ち進んでリーグを制覇し、ワールドシリーズで優勝することのみです。プレーオフで負けてしまえば、地区優勝の喜びなどは雲散霧消してしまうものなのです。
僕自身もずっとスポーツをやってきましたから、負ける悔しさはよく理解できます。よく、負けた人に「ナイスゲームだったよ」と声をかける人がいますが、あれは敗者にとっては何の慰めにもなりません。ナイスゲームであろうが、凡戦であろうが試合は勝たなければ意味がないからです。ナイスゲームで負けるより、凡戦で勝ったほうが何倍もうれしい。「敗戦にナイスゲームなし」と僕は思います。
さて、このコラムの今年の更新分はこれが最後になります。来年は第2週更新分から皆さんのお目にかかりたいと思います。それでは皆さん、よいお年を。
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