"Come back next year. I'll get you to Detroit. Give me one more year."
(ピッツバーグ・スティーラーズ QB ベン・ロスリスバーガー)
今月は僕がデトロイトで現地取材をしてきたスーパーボウルから名言をお届けします。
今回の名言は実際には1年前の発言なのですが、今回のスーパーボウルで最も注目を浴びた言葉の一つです。
今年は、今季限りで引退すると言われているスティーラーズのRBジェローム・ベティスが故郷デトロイトで初めてのスーパーボウル出場を果たしたことが大きな話題となりました。ベティスは過去10年にわたってチームの顔としてファンに愛されてきました。しかし、この1〜2年は体力的な衰えから先発の座を失い、キャリアも最後に近づいてきた印象がありました。
ベン・ロスリスバーガーは今年2年目の若いQBです。スーパーボウルに出場した先発QBの中では史上2番目に若い選手となりました。この選手は、新人だった昨年に、先輩QBのけができゅうきょスターターとなります。チームとしても本人としても予定外のことでした。NFLでは新人QBが活躍できる例は皆無に近いからです。
ところが、ロスリスバーガーは破竹の14連勝を記録し、スティーラーズをプレーオフへと導くのです。昨年のスティーラーズは15勝1敗というNFLで最高の成績を収めました。スーパーボウルで優勝する可能性も十分にあったのです。
しかし、スーパーボウル出場を賭けたカンファレンス決勝戦で宿敵ペイトリオッツに敗れてしまいます。あと一歩のところでスティーラーズはスーパーボウル出場資格を失ってしまったのです。
レギュラーシーズンの成績がよかっただけにチームは大きく落胆しました。スーパーボウルに優勝して引退するという最高のシナリオを描いていたベティスは、出場すら果たせないままにユニフォームを脱ぐべきか迷うことになります。
そんな時、敗戦に沈むロッカールームでロスリスバーガーがベティスに投げかけた言葉が標題の名言だったのです。
試合の敗因を作ったのはロスリスバーガーでした。3つのインターセプトを喫し、試合の主導権をペイトリオッツに譲ってしまったのです。その自責の念は少なからずあったでしょう。しかし、プロ入りわずか1年目の選手が吐くセリフとは思えません。
Come back next year.と言ってロスリスバーガーはベティスに翻意を促します。来年は必ずスーパーボウルに出場させてあげるから。その代わり自分に1年間の時間をくれと言うのです。
ロスリスバーガーは1年後に約束を果たしました。プレーオフのシード順位が6番目と最も低いスタートながら、スティーラーズは第1〜3シードを次々となぎ倒し、スーパーボウルに進出したのです。人気のベティスのホームカミング。これは伝統あるスティーラーズの中でも、これから先ずっと語り継がれるエピソードになるでしょう。そして、ロスリスバーガーのこの言葉もそのたびに名言として思い出されることになるのです。
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