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スポーツ名勝負・名場面

By Hiroshi Ikezawa / 生沢 浩

スポーツ記者、生沢浩の13年に及ぶスポーツ記者生活の中で、忘れることのできない名勝負・名場面をピックアップして、それを英文記事でどのように伝えたのかを紹介しています。
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Hiroshi Ikezawa / 生沢 浩

Vol. 5 : 番外編:珍場面トップ5

長期にわたって人気を誇っているスポーツ番組のひとつにプロ野球の珍プレー・好プレー集というのがあります。各テレビ局とも趣向を凝らして、面白おかしいものに仕上げていて、なかなか視聴率もよいのだそうだ。かく言う僕もこのたぐいの番組は大好きで、ビデオにとって見るくらいのファンです。

 一生懸命やっている選手には申し訳ないけれど、思わず笑ってしまうプレーというのは起きてしまうもの。それをエンジョイするのもスポーツの楽しみ方としてはありなんじゃないだろうか。

 だけど、昔は「好プレー」が主で、珍プレーは番組に最後にいくつか紹介する程度のものだった。それが、いつの間にか逆転してしまい、今では好プレーのほうがおまけのようになっている。もっとも、笑った後に見るプロ選手の美技は、なおさらに素晴しく見える(と、一応フォローはしておこう)。

 スポーツの名場面をお伝えするこのコラム、今回は番外編で、僕が見た、または体験した迷・珍場面トップ5のご紹介です。

番外編:珍場面トップ5 

第5位 「トイレどこ?」

1998年に長野オリンピックを取材したときのこと。日本ジャンプ陣が札幌オリンピック以来の黄金時代を迎えていた。92年のアルヴェールヴィル、94年のリレハンメル大会でも日本はメダルを獲得し、いよいよ地元で金メダルとの期待が大きくかかっていた。

 ジャンプ団体で日本が大逆転の末に金メダルを獲得したことを覚えている読者の方も多いだろう。ハプニングが起きたのはそれに先立って行なわれたラージヒル個人戦でのことだった。

 ラージヒルでは日本のエース船木和喜選手が金メダルをとり、人気の原田雅彦選手が銅メダルを獲得。リレハンメル大会で痛恨の失敗ジャンプを犯して、団体金メダルを逃した責任を痛感していたと言う原田選手には「禊(みそぎ)」のメダルだった。

 競技後の記者会見は日本人報道陣でごった返し、延々と30分以上続いた。原稿の締め切り時間が迫っていた僕は、選手のコメントも十分に取ったので席を立って会見場を後にした。出口まで差し掛かったとき、後ろでなにやらガヤガヤするなと思い、振り返ると、そこにはたった今までステージで記者団の質問に答えていた原田選手の切羽詰った顔があった。原田選手は僕と目が合うや、「ねえっ、トイレどこッ?」といきなりたずねたのだった。

 会見中も何か落ち着かない様子だと思っていたら、トイレに行きたかったのだ。とうとう我慢ができずに会見を中座したようだ。幸い、原田選手は関係者に案内されて無事にトイレにたどり着いたようだが、とっさに尋ねられた僕はただあっけにとられるしかなかった・・・・。

 ワンポイントレッスン:オリンピックは英語でOlympicsと常に複数形を使う。これは、ひとつの大会でたくさんの競技が行なわれるから。また、Olympicsの代わりにGamesということも(例:Athens Games)。この場合もかならず 複数形で、しかもGは大文字。一般にスポーツ英語でGamesと表記する場合はオリンピックか、それに準ずる総合大会(アジア大会やユニバシアードなど)と決まっている。

第4位 「当たった!」
 90年代の半ばまで、ジャパンタイムズは日本で行なわれるバレーボールのワールドカップやワールドグランプリを後援していた関係で、僕もずいぶんと取材に駆り出された。バレーボールの取材席はコートサイドにあり、間近で見るスパイクはテレビでは味わえない迫力がある。

 僕は特に男子バレー、それもイタリアやブラジルなどパワフルなスタイルを売りにするチームを取材するのが好きだった。

 90年代のブラジルのエースアタッカーでネグロンという選手がいた。世界でも有数のパワーヒッターでそのスパイクはまさに目にもとまらぬ速さだった。コートサイドで取材しているとブロックされたスパイクが飛んでくることも多く、そのたびに僕ら取材陣は怖い思いをするのだが・・・・

 92年の秋だったと思うが、僕はオランダ対ブラジルの試合を取材していた。背の高さを売りにし、ガリバー軍団といわれたオランダとネグロン率いるパワーバレーのブラジルの名勝負だ。名勝負に心躍るはず・・・だったのだが、実は僕はコートサイドでかなりイラついていた。隣に座っている外国人の女性記者のせいだ。

 彼女は取材するでもなく、ただ観戦している様子。それも、まるでスタンドのファンのように歓声をあげるなどうるさいことこの上ない。テーブルを揺らされるたびににらみ付けるのだが、全く意に介さない。しかも、酒臭い。試合前にメディア控え室でしこたまビールを飲んでいたのだ。試合の興をそがれる思いだった。

 試合に集中して嫌な思いを忘れようとしていたのだが、そんな時、ネグロンのスパイクがオランダのブロックに阻まれて僕の方向に飛んできた。ただ、ボールの軌道から判断するにぎりぎり僕にはぶつかりそうもない。こんなときは慌てず、騒がず、動かないで避けるのが格好いい。なんといっても、コートサイドはテレビに映るのだから(笑)。

 ボールの軌道を見切った僕は冷静を装っていた。と、その時である。隣の女性記者が何を思ったのかそのボールに向かって手を出したのだ。ボールは彼女の手に当たって軌道を変え、僕の頭に見事に命中!。かくして、僕はバレーボールを頭に打ち付けるという無様な姿を全国ネットでさらしてしまうハメになったのだった。

 それにしても、ブロックで跳ね返されたとはいえ、ネグロンのスパイクは痛かった(泣)。

 ワンポイントレッスン:スポーツには殺ばつとした言葉が意外と多く使われている。たとえば野球のsteal。日本語の野球用語でも「けん制球でランナーを『刺す』」、「本塁で『憤死』」などどよく耳にする。バレーボールではスパイクをkillと表現することがある。

第3位 「当たった!パート2」
 これもバレーボール取材でのこと。忘れもしない入社1年目の91年秋のことだ。僕は初めての出張で大阪、岐阜、広島を訪れた。計2週間に及ぶ長期の出張だった。

 最後の広島に行くころには長旅の疲れも出ており、風邪もひいて体調は最悪。それでも、初めての広島ということで、ぜひともカキを食べようと思った。

 広島といえばカキが名産だ。移動日で取材がなかった日はホテルのレストランでカキのフルコースを堪能することにした。生カキから始まり、吸い物、土手なべ、そして、最後は雑炊。よくもまあ、平らげたものだと今でも思う。

 ところが、深夜になって急に腹の具合がおかしくなった。ものすごく気持ちが悪い。吐いても吐いても一向によくならない。下痢も止まらない(食事時の読者の方、ごめんなさい)。食べ物でこんなに苦しい思いをしたのは初めてだった。これまでカキにあたったことは一度もなかったが、カキ自体は新鮮でも体調が悪いとあたることは珍しくないらしい。ホテルで胃腸薬をもらって何とか持ちこたえたものの、体調が悪いにもかかわらずたらふくカキを食べた意地汚さに我ながらあきれる思いだった。  次の日、記者仲間にこの話をしたら大笑いされた。そして、口の悪い記者が一言。「どうせあたるならふぐがよかったのに」(おいおい)。

 ワンポイントレッスン:ふぐを食べるときは体調を整えて。

第2位 「そんなつもりじゃ・・・」
 景気の動向はスポーツ大会と無縁ではない。スポンサーがなければスポーツ大会は成り立たず、景気の低迷とともにいろんな大会が縮小もしくは中止されていった。日本におけるテニスの大会もその例に漏れない。

 僕が入社した91年頃はATP/WTAのツアートーナメントも年間4〜5つは行なわれていた。現在ではジャパンオープンのみとなり、さびしい限りだ。

 今はなくなってしまった大会のひとつにセイコースーパーテニスがある。男子のトッププレーヤーが来日する華やかな大会だった。時計会社がメインスポンサーとあって、記者発表に来た記者全員にセイコー製の腕時計がお土産として配られたこともある。思えば古きよき時代だった(ちょっと動機が不純?)。

 さて、僕の取材ノートによれば93年10月12日のこと。当時世界第6位のステファン・エドベリ(エドベリというのは彼の母国スウェーデン語での発音。英語ではエドバーグといいます)が、ランク67位でほとんど無名だったアメリカのチャック・アダムズに緒戦で敗れるという大波乱があった。しかも、タイブレークまでもつれたもののストレート負け。このセイコーテニスで優勝すれば世界ランク1位に返り咲く可能性もあったエドベリには痛い敗戦だった。

 「事件」がおきたのは試合後の記者会見でのことだ。このアップセットに最も驚いていたのはアダムズ自身。まだ22歳で初々しさの残るアダムズは慣れない記者会見でやらかしてくれた。

 僕は会見場の最前列に席を取り、コメントを録音するためにテーブルにテープレコーダーを置いた。僕ら英文記者にはこのテレコが必需品。後で記事を書くときにこのテープを聞きながら選手のコメントを書くのだ。

 会見は終始和やかな雰囲気で進んだ。まるで素人のようなアダムズのリアクションに会見場からは失笑が漏れたほど。会見が終わり、僕はテーブルに置いたテレコをとろうと手を伸ばした。すると、何を思ったのか、アダムズがにっこりと笑って僕の手を握ろうとしてくるではないか。

 そう、アダムズは僕が勝利を祝福して握手を求めたと勘違いしたのだ。僕が慌ててテレコを拾い上げると、間違いに気付いたアダムズは苦笑い。それを見ていた記者団からは爆笑が起こった。ごめんね、アダムズ君。そんなつもりじゃなかったんだけど・・・・。

 ワンポイントレッスン:文中でも使った「アップセット(upset)」は「怒る」、「困る」などの意味で使われるが、スポーツでは大番狂わせの意味。格下の選手・チーム(underdog)が優勢を伝えられる側(favorite)を負かすときにはこの単語が使われる。また、格上の選手にばかり強い人を日本語で「大物食い」と言うが、これは英語も一緒で、big eaterなどと表現される。

第1位「サードフライが・・・」
 千葉ロッテマリーンズのホーム、千葉マリンスタジアムは風が強いことで知られる。外野スタンドのすぐ裏は浜辺になっており、海風が入り込むからだ。もちろんスタジアムは塀で囲まれているのだが、デザイン上、壁に穴がいくつかあいているので、そこから時折突風が吹きつけ、守備選手を泣かせることになる。

 1996年の開幕戦を取材した僕は信じられない光景を目撃することになるのだ。前年にボビー・バレンタイン監督の指導の下で2位となったロッテは、王監督率いるダイエーホークスを迎えていた。試合が中盤まで差し掛かると、急に天気が怪しくなった。雨雲が突如としてわいてきて、風も強くなり、まるで嵐のような天候になってしまったのだ。

 ただでさえ風が複雑に舞う千葉マリンスタジアムのフィールドは、さながら台風のような騒ぎ。そんなときだ。ダイエーの選手がサードフライを打ち上げた。ところが、フラフラっと上がったそのフライは強風にあおられてどんどん右に流されていく。ショートの守備位置を通り過ぎて、ピッチャーマウンドの上へ。この時点で三塁手はもうボールを追っていなかった。慌ててピッチャーが捕球体勢に入る。いや、まだボールは流される。あれよという間にボールはファーストを通り過ぎる。最終的に捕球をしたのは一塁手。ボールをキャッチした位置はフェアグラウンドから大きくはみ出ていた。

 千葉マリンスタジアムをホームとするロッテの選手だからキャッチできたのかもしれないが、それにしても、サードフライがファーストへのファールフライとなったシーンは後にも先にもこれきりしか見たことがない。

 ワンポイントレッスン:これがホームフィールドアドバンテージ。

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