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記者ほど素敵な商売はない

By Hiroshi Ikezawa / 生沢 浩

ジャパンタイムズ運動部記者、アメリカンフットボールライター、TV解説者のさまざまな顔を持つ生沢浩が15年間の記者生活のなかで見聞きしたこと、思ったことなどを紹介するコラムです。
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Hiroshi Ikezawa / 生沢 浩

Vol. 5 : インタビューの醍醐味

 ひとくちに新聞記事といってもいろんなタイプがあります。事件・事故をそのまま伝える記事(ストレートニュース)、検証を加味した解説記事、じっくりと読ませる読み物記事(フィーチャー)、ちょっとした話題を扱う囲み物などです。

 数ある記事のなかでも読者から最も人気が高いのがインタビューものです。著名人に個別に話を聞き、それを記事にするものです。読者が普段の生活のなかで接することのできない有名人(芸能人、スポーツ選手、政治家)と直接話ができるのは記者の特権のひとつでしょう。そして、彼らの「肉声」が聞けるからこそインタビュー記事は多くの人に読まれるのです。

 インタビュー記事には二通りあります。インタビューする側(記者)とされる側(有名人)の発言をそのまま掲載するタイプのもの(一般にQ&A方式と呼ばれます)と、全体をひとつの物語のように構成して、そのなかでインタビュー対象者の発言を挟み込んでいくスタイルを用いるものです。

 前者は発言をそのまま書き出せばいいので、書き手の手間はかなり省かれます。また、「(笑)」や「!」といった記号や「う〜ん」といった口語的な言い回しなど、普段の記事ではなかなか使えない表現によって、独特の臨場感が生まれます。インタビュー対象者のしゃべり癖までも再現されるので、読者はまるで自分が直接有名人と話しているような感覚を持つことができます。

 ただし、このスタイルは対象者がよほど有名でなければ使うことができません。誰だか分からない人がべらべらしゃべっている記事など、誰も読みたいと思わないからです。デビューしたての芸能人やスポーツ選手、一般人をインタビューするときはその人となりの説明も不可欠となるので、どうしても物語形式にならざるを得ません。

 インタビュー記事は書き手にとってはとてもエネルギーの必要な仕事です。対象者が決まると、まず相手に連絡をしてインタビューを申し入れます。僕らが「アポとり」と呼ぶこの作業がまず第一関門なのです。

 スポーツの例をとりましょう。選手や関係者にインタビューするには所属球団や代理人に許可をもらう必要があります。これがインタビューが成立するかどうかを決める鍵となるので、とても重要な手続きです。

 選手が多忙でスケジュールが合わない、メディアには発言しない主義であるなどという理由で断られることも少なくありません。多額の謝礼を求められて、こちらから断念する場合もあります。多忙を理由にインタビューの申し入れを断った選手がテレビの独占インタビューに応じていて、悔しい思いをしたこともありました。

 最近ではどんなスポーツにも限らず、メディアを通じて選手自身の思いを積極的にファンに発信していこうと考えるチームや代理人が増えてきました。かつてプロ野球はインタビューのとりにくいスポーツだったのですが、この10年ほどで広報体制がずいぶんと整い、メディアへの対応もよくなりました。

 アポが取れるとインタビューの準備です。対象者のプロフィールを確認し、質問事項を考案します。対象者に著書がある場合にはできるだけ多くを読んでおくことが必要です。僕はインタビューの質問を考える際には、ある程度漠然としたものにしておきます。事前に細部まで決めてしまうと、予想外の答えが返ってきたときにアドリブがきかなくなってしまうからです。経験が浅いときにはこれで失敗したこともありました。準備が整えばいよいよインタビューです。僕はインタビュー中にはあまりメモを取りません。相手の発言に集中したいからです。テープレコーダーを使ってインタビューを録音するようにしています。記者の中にはこの方法を嫌がる人もいます。後からテープを聴きなおすことが二度手間になるからです。でも、英語でインタビューすることも多い僕はやはりテープレコーダーが手放せません。

 僕はインタビューには必ず2台のレコーダーを使います。もちろん、バックアップのためです。ひとつはICレコーダーで、もうひとつは従来のテープレコーダーです。ICレコーダーは軽量で、長時間の録音ができ、再生箇所をすばやく見つけられるので便利です。が、やはりデジタルはボタン操作ひとつで誤ってデータを消してしまう危険もあります。そのときのためにテープレコーダーは必要なのです。

 インタビューが終わるとテープ起しという聞きなおしの作業が待っています。インタビューの内容によっては発言を書き出すこともありますが、これに要する時間はぼう大なものになります。インタビューの作業でもっとも労力を必要とするものです。

 インタビューは大変な作業を伴うものですが、その見返りもまた大きいものです。何かの分野で頭角を表した人は、必ず人をうならせるようなユニークな考え方を持っているものです。それに直接触れることができた時、「新聞記者って楽しいなあ」と思うものです。来週は、僕が実際に行なったインタビューの中から、忘れられないエピソードをご紹介しましょう。

次回予告:インタビューの醍醐味その2

 高橋尚子選手の素顔、貴乃花親方のユニークな相撲論、川淵三郎Jリーグチェアマン(当時)の驚くべき記憶力とは?

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