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記者ほど素敵な商売はない

By Hiroshi Ikezawa / 生沢 浩

ジャパンタイムズ運動部記者、アメリカンフットボールライター、TV解説者のさまざまな顔を持つ生沢浩が15年間の記者生活のなかで見聞きしたこと、思ったことなどを紹介するコラムです。
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Hiroshi Ikezawa / 生沢 浩

Vol. 8 : 記事が送れない!どーするッ、オレ?!

 現場で取材する記者の仕事は、試合が終わってからが本番です。限られた時間内でいかにうまく熱戦の感動を読者に伝えるか、これが記者の腕の見せ所です。

 ところが、せっかく書いた記事も会社に入稿しなければ新聞に載りません。今回は入稿のトラブルのお話です。

 現在の入稿方法は電子メールが主流です。あっという間に送信できるので、以前に比べるとそれだけ記事を書くことにあてる時間が多くなりました。僕が入社したころ(1991年)のジャパンタイムズではすでにパソコン通信で記事を入稿するのが普通でした。それでも当時は、原稿用紙に手書きしてファクスで入稿する社もまだありました。この場合は社でファクス受信したものを改めてワープロで入力し直さなければならず、それだけ手間も時間もかかったそうです。記者が急いで殴り書きした原稿は読むほうも苦労したという話を聞いたことがあります。

 さて、この入稿で僕は一度だけ大変な思いをしたことがあります。入社一年目で、プロ野球のナイターを西武球場(今のインボイス西武ドーム)で取材したときのことです。

 当時、ジャパンタイムズではタンディとよばれるノートパソコン大のワープロを使用していました。タンディはパソコンではないので、記事を書き、それを電話線を使って送信する機能しか付いていません。スクリーンも数行程度が見られるだけの小さいものでした。今から考えるとずいぶんと不便なツールを使っていたものです。

 記事を送信するためにはカプラーとよばれるモデムを使います。このカプラーは縦30センチ、横10センチくらいの機械で、本体には直径5〜6センチの丸い穴がふたつ開いていました。この穴に受話器の受話口と通話口を押し付けるのです。

 記事が書きあがると、まず、タンディとカプラーをパラレルポートケーブルで接続します。それから、パソコン通信で使用する電話番号(会社のホストコンピューターの受け入れ先)をダイヤルし、回線がつながったところで受話器をカプラーの上に押し付けます。この際の押し付け方がゆるいと穴と受話器の隙間から雑音が入り、通信が失敗してしまいます。

 カプラーの穴は当時もっとも一般的だった受話器(公衆電話の形)の形にしか対応しておらず、取材先にこれに適した電話機がない場合は会社から電話機を持っていかなければなりませんでした。これだけでも、タンディ、カプラー、ケーブル、電話機といった大荷物を抱えて取材先へ出かけなければいけなかったことがお分かりいただけますよね。とにかく、取材現場への移動も一仕事だったのです。

 通信には2〜3分かかりました。今の電子メールからは考えられないくらい長時間ですよ。ようやく通信が終わったと思って、会社に確認の電話を入れると、入稿がうまくいっておらず、最初からやり直しということも何度も経験しました。

 さて、西武球場に取材に行ったときのことです。いざ、入稿しようと思うと、カプラーの電池が切れていることが分かりました。もちろん、取材に行く前にはバッテリーの残量を確認していくのですが、移動中に何かの拍子にカプラーの電源が入ってしまったようです。試合が終わるまでにバッテリーが底をついてしまったのでした。

 それでも何とか1回くらいは送信できそうだったので、運を天に任せながら送信しました。でも、普段から行ないのあまりよくない僕の願いは天には届かなかったようです。こういうときに限って送信ミスがあって、やり直しというハメになったのです。カプラーはもう動きません。締め切り時間も刻々と迫って来ています。

 今なら記事をあきらめて、共同通信から配信されるものを代用するのですが、当時の上司は取材したものは無理をしてでもその記事を使うという方針だったので(新人の僕にはとても心強いことでした)、何とか策を講じることになりました。

 社に戻って入稿し直すには西武球場のある所沢はジャパンタイムズのある田町まで遠すぎます。そこで僕たちは最後の手段を使うことにしたのです。

 僕がタンディに書いた記事を電話口で読み上げ、それを社のアメリカ人エディターが書き取るというものです。これが想像以上の大変だったのです。記事はかなり長いものでしたし、周りの雑音もあってうまく通じません。おまけに、球場のスタンド内にある公衆電話から入電していたので、周りの人がものめずらしげにジロジロと眺めていくのです。これは恥ずかしかった!

 何とか無事に入稿が終わり、次の日の新聞には記事が載りました。電子メールでやり取りする現在では考えられないことですが、当時はこういったトラブルも時には起こったのです。今ほど便利ではなかったけれど、当時の上司の心遣いやエディターの辛抱強さに支えられたことは新人だった僕に大切な何かを教えてくれたような気がします。

次回予告:初出張の思い出

 僕が初めて出張したのは入社1年目の秋のことでした。ジャパンタイムズが後援していたバレーボールの大会に帯同するもので、その期間は2週間。長期出張の最後の場所、広島で僕を襲った悲劇とは?!

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