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記者ほど素敵な商売はない

By Hiroshi Ikezawa / 生沢 浩

ジャパンタイムズ運動部記者、アメリカンフットボールライター、TV解説者のさまざまな顔を持つ生沢浩が15年間の記者生活のなかで見聞きしたこと、思ったことなどを紹介するコラムです。
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Hiroshi Ikezawa / 生沢 浩

Vol. 15 : 記者の常とう文句にご用心

 あるファーストフードのテレビCMで「原材料は○○さんが作りました。だから安心です」というコピーを見たことはありませんか。原材料となる食品の生産者がはっきり分かっているから安心してお召し上がりくださいというわけです。でも、これって本当?

 僕はこのファーストフードが安全ではないと言っているのではありません。生産者が特定できるからといって食品が安全であることの証明にはならないと言いたいのです。生産者が、例えば完全有機栽培をしているとか、無農薬を徹底しているということが証明されない限り食物が安全だとは言い切れないのではないでしょうか。ところが、このCMではそのような説明はありません。

 また、「体脂肪が気になる方に、○○(商品名)をどうぞ」というコピーも要注意です。一見この商品がダイエット効果のあるような印象を持ちますが、実際には○○にダイエット効果があるとは一言も言っていません。

 メディアが使う言葉はよく注意を払って聞かないと間違った情報を受け取ってしまう可能性があります。もちろん、新聞記事もそうです。スポーツ記事では大げさな表現が頻繁に使われます。「前人未到の快挙」、「伝説の名選手」、「打撃の神様」などなど。こういった表現を使うと記事にダイナミックな印象を与えることができます。僕もよく使います。が、あまりに行き過ぎた表現は冒頭に述べたテレビCMと同じく、必ずしも正しい情報を伝えているとは言えないのです。

 特に僕が気になる表現はケガに関するものです。「ひざがボロボロ」、「満身創痍」といった言葉をスポーツ新聞や雑誌でよく目にしませんか。僕はこれらの言葉に接するたびに違和感を覚えてしまうのです。

 確かにスポーツ選手は体を酷使します。一般人なら松葉杖が必要なケースでも試合に出なければいけない状況も少なくありません。でも、「ひざがボロボロ」というのはどうなのでしょうか?ひざがボロボロな状態で人は立っていられるものなのでしょうか。

 僕は「満身創痍」という表現を使いません。どんなに故障が多くても、競技をしている選手に使うにはあまりに大げさな表現だからです。本来、満身創痍ならばスポーツをやるどころではないはずです。それこそ瀕死(ひんし)の状態でなければおかしい。

 ただ、僕が唯一この人になら満身創痍という表現を使ってもいいと思った選手がいます。それは、NFLのタイタンズというチームで長く先発QBを務めたスティーヴ・マクネアです。2003年に彼は背骨、肩、足、ひざ、ひじを故障します。それでも試合には出場を続けました。彼の故障個所は二けたを越えたと言います。その状態で試合に出るだけでも大変なのですが、マクネアはきちんと結果を出します。この年、マクネアはペイトン・マニングと同時受賞ながらリーグMVPに選出されました。

 最近で満身創痍という言葉が使われたのを見たのはプロ野球のある選手に対してでした。確かにその選手は死球が多く、それによる故障も多いことで有名です。しかし、僕はこの選手には満身創痍という言葉は使いません。あまりにも故障が多く、チームに貢献しているとは思えないからです。彼は毎シーズンのように故障で戦列を離れます。僕の考えでは、こういう選手はチームの戦力として計算できない期待はずれだということになります。

 故障は必ずしも選手だけの責任ではありません。しかし、阪神の金本知憲選手のように日ごろから体のメンテナンスを怠らず、徹底した節制ぶりでフルイニング出場の世界記録を樹立する努力家もいるのです。やはり、故障をしないというのも選手の責任範囲ではないでしょうか。

 僕がケガにまつわる表現で気にかかるのは、こういった選手の自己管理の責任をぼかすことになるからです。いろんな情報がはんらんしている現代だからこそ、言葉の使い方、表現の仕方に注意を払いたいものです。 

次回予告:最悪の思い出 名刺を捨てられた!

 取材活動はいつも楽しいことばかりとは限りません。なかには思い出すのも嫌な経験もあるものです。最悪なのは、目の前で名刺を捨てられたこと。あれは、記者1年目の91年夏のことでした。

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