いよいよ今週からNFLのシーズンが始まります。僕は今週末から来週の月曜日にかけて3試合を現地で取材する予定です。4年ぶりのレギュラーシーズン取材なので、今からとても楽しみです。
僕自身はアメリカでの現地取材はアメリカンフットボールでしか経験していませんが、それでも日本の取材環境とは大きく違います。
日本での取材の流れをプロ野球を例にとってご紹介しましょう。プロ野球を担当する記者は試合の数時間前に球場入りし、チームの試合前練習を見学します。監督がフィールドに登場すれば監督を取り囲んで話を聞きます。また、練習から引き上げてくる選手もロッカールームに帰るまでのわずかな時間で取材をすることになります。これは僕らの業界では「囲み取材」と呼び、会場を設けて行なう公式の記者会見とは趣を異にします。ただし、この囲み取材で出てくる話題は読者の関心を誘うものが多く、スクープも生まれやすいのでおろそかにすることはできません。
試合が始まると記者はプレスルームに陣取り、試合を観ながら記事の構想を練ります。このときはスコアブックをつけながら観戦する場合が多いです。試合中は、ホームランを打つなど活躍した選手の談話のメモが回ってきます。それ以外に公式記録などが回覧されることはプロ野球ではありません。
試合が終わるとフィールド上に行き、再び囲み取材を行ないます。時にはロッカールームへ足を運び、そこでまた選手に話を聞くことになります。
プロ野球では日本シリーズでもない限り、一般のレギュラーシーズンゲームでは記者会見は行なわれません。
プロ野球と比べるとNFLの取材は全く違います。まず、試合前ですが選手の練習中はカメラマン以外はフィールドへの入場が許可されることは少なく、練習を間近で見ることはほとんどありません。NFLではほとんどのレギュラーシーズンゲームが毎週日曜日の午後に行なわれます。プレスルームにはモニターがいくつもあり、同じ時刻にほかの場所で行なわれている試合をすべて見ることができます。
記者が座る席にはいくつかのモニターが設置してあり、フィールドで行なわれている試合のリプレーが随時映し出されます。これは、リプレーが重要な役割を果たすフットボールならではのものでしょう。
記者室にはちょっとしたラウンジが設けられていて、清涼飲料水やホットドックなどの軽食を自由に取ることができます。これは日本のプロ野球ではまずありえないことです。ちなみにMLBでも同じく記者室にはラウンジがあるそうです。
試合中はクオーターごとの公式記録が配布されます。NFLではこうした記録や資料といったものが瞬時に出てきます。例えば、ある選手がチームの歴代記録を更新した場合、過去の記録がすぐにプリントアウトされて配られます。アメリカのメディアは記録をとても大切にするので、こういう習慣が生まれたのでしょう。
記録や資料に関する限り、アメリカのスポーツはメディア向けに非常にサービスが行き届いているといえます。日本とアメリカの取材環境の一番の大きな違いは、このサービスにあると思います。
試合が終わるとゲーム全体の公式記録のほか、主力選手やヘッドコーチたちの試合後のコメントがプリントアウトされて、これも配布されます。NFLはアメリカの記者のみならず、日本やメキシコからも取材記者が多数訪れるので、こういったサービスはとても有効なのです。
NFLでは試合後は必ずヘッドコーチの記者会見が行なわれます。選手に話を聞きたいときはロッカールームに行くことになります。いわばこれがアメリカでの囲み取材ですね。
初めてアメリカで取材をしたときには勝手がわからずに右往左往したものですが、慣れてしまうと現地での情報提供のメディアサービスはとてもありがたいものだと実感します。日本でも、ラウンジは作ってくれなくてもいいから、もう少し情報の提供サービスを充実させて欲しいと思います。
次回予告:NFL取材日記
来週はちょうどアメリカでNFLを取材している時期です。どういったスケジュールで取材をし、どんな出来事があったのかをドキュメントでリポートします。
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