アメリカでメジャーリーグやNBAをも凌ぐ人気を誇るプロフットボールNFLが開幕しました。僕はその開幕戦を取材するためにアメリカにやってきています。僕がNFLの開幕戦を取材するのはこれが初めてです。
今年のNFL開幕戦は現地時間9月7日(日本時間8日)に昨シーズンの優勝チームであるスティーラーズの本拠地、ペンシルベニア州ピッツバーグ市で行なわれました。対戦相手は今年のオフに大型補強を施して前評判の高いマイアミ・ドルフィンズでした。
地元のチームがディフェンディングチャンピオンとして迎える新シーズンとあって、ピッツバーグの街はとても盛り上がっていました。もっとも、試合の1週間前にオコナー市長が現職のまま病死し、試合当日の午前に葬儀が行なわれたので自粛ムードがなかったわけではありませんでした。
それでも、ゲーム当日はスティーラーズのジャージやTシャツを着た人たちであふれていました。僕は学生時代に留学していたピッツバーグ大学の近くのホテルに宿泊していたのですが、大学に通う学生のほぼ9割がスティーラーズにかかわる何らかのグッズを身に着けているのです。街中がその日の試合を心待ちにしている雰囲気が伝わってきました。
その日の午前に、面白い光景を目にしました。日本で言うところの保育園か幼稚園の園児たちが先生に連れられてメインストリートの脇で「Hook 4 (for) the Steelers」と書いた大きなプラカードを持って立っていたのです。そして、道行く車に向かって「Go Steelers!」と叫ぶのです。
それを見た車はみなクラクションを鳴らしてそれに応えます。乗用車はもとより、路線バス、輸送トラック、それにパトカーまでがクラクションを鳴らして子供たちの声援にエールを送るのです。サイレンカーはわざわざランプを照らして通り過ぎていきました。日本ではまず見られないシーンですね。
アメリカのスポーツは地元密着性が強いので、このように街をあげて応援する風潮が生まれます。地元のチームをみんなが応援している光景というのは見ていてうらやましくなるものです。
街中では知らない人たち同士が握手をしたり、ハイタッチをかわしています。こうすることで自分たちの気持ちも試合に向けて盛り上がっていくのでしょう。対戦するチームには中立の街で行なわれるスーパーボウルとは全く違った雰囲気が地元で行なわれるレギュラーシーズンゲームにはあります。
スタジアムまでは主要なホテルからシャトルバスが出ます。もっとも、スタジアム近くはひどい渋滞で近づけないので、少し離れてところでバスを降りて歩くことになります。僕が会場入りしたのは試合が始まる3時間前。もちろん、スタジアムも開場していません。それでも、スタジアムの周りにはバーベキューを楽しむ人たちに姿がたくさん見られました。
実はこれ、テールゲートパーティと呼ばれるアメリカのスポーツ観戦ではおなじみの光景なのです。試合が始まるまで近くの広場でバーベキューをして、それから会場に入っていくのが地元の人たちのフットボールの楽しみ方です。中には観戦チケットをもっていない人も多勢います。その人たちはラジオでゲームの実況に耳を傾け、また会場からもれてくる歓声を聞きながら臨場感を味わいます。はたから見ていても本当に楽しそうです。僕はいつも記者としてフットボール会場に入りますから、テールゲートパーティはしたことがありません。ファンにしてみれば、会場には入れる僕たちメディアはうらやましいことでしょう。こんなことを言うと罰が当たるかもしれませんが、僕もテールゲートパーティをしてから会場に入り、ビールを飲みながらNFLを観戦したいと、取材するたびに思います。
さて、いよいよスタジアムに入りました。この続きはまた来週お届けします。
次回予告:NFL会場独特の雰囲気
NFLの試合が行なわれているスタジアムの中は日本では味わえない、独特の雰囲気があります。次回はそれをご紹介します。
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