アメリカンフットボールのスタジアムは底がだ円形のすり鉢のような形をしています。すり鉢は英語でボウル(bowl)ですね。このことからフットボールの試合は特に〜ボウル(例えばスーパーボウル=Super Bowl)と呼ばれることがあります。
NFLのスタジアムでは7万人前後の観客を収容することができるのが普通です。最も収容人数が多いのはワシントン・レッドスキンズのホームスタジアム、フェデックスフィールドで、91,000人あまりを収容することができます。これらが毎試合ほぼ満席になってしまうのですから、NFLはやはりアメリカのNo. 1スポーツなのです。
NFLのスタジアムには独特の雰囲気があります。これは、スタジアムに大勢集まるファンが作り出すものです。スタジアムに集結する観衆のほぼ9割は地元チームのファンです。ですから、ひいきチームに投げかける声援はものすごい音量になります。日本でいえばサッカー日本代表戦や甲子園球場での阪神タイガースの試合を思い浮かべればイメージが沸くかもしれません。
日本でのサッカーやプロ野球のように応援団がいて、鳴り物を使って応援するという習慣はアメリカにはありません。彼らの応援手段は「生身の音」です。ただし、7万人が一斉に声を発したら、これはスゴいです。フィールド上にいると、上のスタンドから声が降ってくるような感じがします。自分の声すら聞こえないといっても言い過ぎではありません。
ファンが最も大声を出すのは相手チームのオフェンスのときです。フットボールではオフェンスチームは声によってプレーの指示を出します。ファンは大声を出すことで(さらにフェンスを叩いたり、地面を踏んでもっと大きな「騒音」を作り上げます)、敵チームの声の伝達の邪魔をするのです。これはまさにNFL独特の雰囲気だといえるでしょう。
ファンの応援の仕方もチームによって千差万別です。例えば、今回僕が取材したチーム(今回はピッツバーグ、ニューヨーク、ワシントンDCと取材しました)の中から紹介すると、スティーラーズは「テリブルタオル」と呼ばれる黄色いタオルを振り回して応援します。また、レッドスキンズは得点のたびにチームの応援歌を全員で歌います。ニューヨーク・ジャイアンツのファンは少しおとなしめだったかな?
NFLの開幕週はレギュラーシーズン中と比べるとやはり地元の盛り上がり方がより大きいと感じました。でも、都市によってその盛り上がり方も変わってくるのです。最初に訪れたピッツバーグは前日から大騒ぎ。街にはスティーラーズのジャージを着た人があふれ、公式グッズを売るお店は平日にもかかわらずに大にぎわいでした。ピッツバーグという街はアメリカの中では中都市の部類に入ります。観光地ではないので、言ってしまえばほかに楽しみがない。そのぶん、NFLチームのスティーラーズに対する思い入れはより大きくなるのでしょう。
反対にニューヨークはどちらかというと冷めている印象を受けました。もっとも、マンハッタンにいる人たちは大半がよそから来た観光客で地元ジャイアンツの試合には興味がなかったのでしょう。スタジアムの周りはさすがにファンでごった返していました。
ニューヨークのチームでありながら、実はジャイアンツの本拠地はお隣のニュージャージー州にあります。マンハッタンから橋を渡ってくるのですが、この渋滞もまた想像を絶するほどでした。年末年始やお盆などでよく見かける高速道路の大渋滞にさらに輪をかけたようなものです。
公共の交通機関はバスしかないので、ほとんどの人が自家用車で球場に訪れます。中には、チケットを持たずにスタジアムの周りでテールゲートパーティをすることだけを目的にする人もいますから、観客数以上の人が一ヵ所に集まることになります。もちろんアメリカは日本に比べると道路も広いのですが、何せ集まってくる車の数が違います。少なく見積もっても2万台はくだらないでしょう。試合が終わった直後は車のテールランプが永遠と続いていました。ようやく道路が流れ始めたのは試合が終わってから2時間ほどたってからのことです。
これがシーズン中はほとんど毎週のように繰り返される光景です。これも、NFL独特の雰囲気の一つといえるかもしれません。
次回予告:取材旅行ハプニング集
今回はピッツバーグ、ニューヨーク、ワシントンDCを6日間で回る取材旅行でした。当然、この間にはいろんなハプニングが起こったのです。
|