皆さん、新年明けましておめでとうございます。
みなさんはどのようなお正月を過ごされましたか?僕は例年になくゆったりとした新年を迎えました。すでに仕事や学校が始まっている方も多いでしょう。2007年が皆さんにとってよい年でありますようにお祈りいたします。
さて、僕が専門としているNFLでは先週末からいよいよプレーオフが始まりました。アメリカ現地時間2月4日に行なわれるスーパーボウルに向けて、激しい戦いが繰り広げられています。
このコラムをご愛読の皆さんはご存知のことと思いますが、僕はジャパンタイムズの仕事のほかにテレビでNFLの試合解説をしています。今回はその解説を話題に取り上げたいと思います。
NFLの試合は3時間を越えることが多いですが、実際に放送されるのは現地のコマーシャルやハーフタイムをカットした編集版です。放送局によって異なりますが、放送時間は2時間半から3時間半くらいが普通です。
僕たち解説者と実況アナウンサーは編集されたVTRを放送局のスタジオの中で見ながら放送します。ですから、僕たち放送スタッフが見ている映像は現地からの中継でない限り、皆さんがテレビでご覧になるものとまったく同じものになります。
通常NFLの試合は現地時間の日曜日と月曜日(日本時間の月曜日と火曜日)に行なわれますが、日本で放映されるのは月曜日以降になります。したがって、実際には過去に終了した試合を数日遅れでお伝えしているのです。僕は月曜日に放送の担当をするときはできるだけ試合の結果を知らずに解説に臨むようにしています。そのほうが自分自身も楽しめるし、放送にも臨場感が生まれるからです。
しかし、数日遅れで放送する試合についてはさすがに結果を知らずに放送するというわけには行きません。ジャパンタイムズでスポーツ面を作成している以上、結果を知らずにいることは無理だからです。それでも、せめて試合の詳細はできるだけ知らないままに収録に臨むようにしています。
試合解説の面白いところは、プレーの持つ意味やゲームの流れについて自分なりの解釈を伝えられることです。もちろん、試合中にいい加減なことは言えませんが、自分の考えでゲームを解説するのは楽しいものです。
解説の中で選手やチームのエピソードを盛り込むのが僕の解説のスタイルです。フットボールは戦術の発達したスポーツなので、ひとつひとつのプレーについて戦術的な解説をすることもありますが、あまり日本で認知されているとはいいがたいNFLでそれをやりすぎると初心者のファンが離れてしまうという懸念があります。たまたまスイッチをつけたテレビでNFLを見たという視聴者もいるかもしれません。そういう人たちをひきつけるには、選手の人間性やチームの置かれている状況を分かりやすく伝えるほうがいいと思うのです。
プレーの解説は難しいです。解説者仲間には日本のフットボールチームでコーチをされている方も多数おり、そういった方たちは普段から戦術に通じていますが、僕たちマスコミの人間はそうはいきません。日本のコーチたちでもNFLのトップレベルのコーチが考案する戦術を完全に理解できるとも限りません。それを分かる範囲でやさしく解き明かすのは意外と難しいものなのです。フットボールは野球と同じように、プレーが1回終了すればインターバルがあります。こういう点では同じく広い長方形のフィールドを使うサッカーやラグビーとは大きく異なります。そのインターバルは30秒前後でしょうか。その間にプレーの持つ意味や、なぜそのプレーが成功したのか(または失敗したのか)を解説するのは簡単ではありません。
時にはしゃべりすぎで次のプレーに差し掛かってしまうこともあります。困るのは、話をしている最中にロングパスなどのビッグプレーが生まれるときです。こういう場合に僕は話を中断して、そのプレーに集中することにしています。そして、チャンスがあれば話を元に戻せばいいのです。最近ではそういったコツもようやく身に付いてきたようです。
解説を始めたばかりのころは、「しゃべる」ということがこんなにも疲れるものなのかと驚きました。でも、考えてみれば日常生活の中で3時間近くもしゃべり続ける経験はほとんどありません。疲れて当たり前です。試合の終盤には声に力がなくなっているのが自分でも分かりました。今ではさすがにそんなことはなくなりましたが、それでも喉が慣れていないシーズン序盤は声がかすれたりします。
最近ではシーズン前に喉を鍛える方法を考え付きました。それはカラオケに行って、声がかれるまで歌うことです。かれた声が復活するころには声に力がこもっているのです。うそのようですが、本当の話です。
次回予告:テレビ放送での失敗談
テレビで解説をするようになってから今年で10年目になります。その間にはいろんな失敗がありました。今でこそ笑い話で済む話ですが、当時は真っ青になったものです。次回はそんな失敗談を披露しましょう。
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