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記者ほど素敵な商売はない

By Hiroshi Ikezawa / 生沢 浩

ジャパンタイムズ運動部記者、アメリカンフットボールライター、TV解説者のさまざまな顔を持つ生沢浩が15年間の記者生活のなかで見聞きしたこと、思ったことなどを紹介するコラムです。
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Hiroshi Ikezawa / 生沢 浩

Vol. 41 : テレビ放送での失敗談

 テレビでNFLの解説をするようになって、早いもので今年が10年目になります。解説した試合は130試合くらいになるでしょうか。

 全ての放送でうまく解説ができればいいのですが、なかなかそうはいかないのが現実です。思い返せばいろんな失敗がありました。

 今も思い出すだけで冷や汗をかいてしまうような失敗が僕にもあります。それはルールの誤認でした。フットボールの中でもNFLはアマチュアとは違う特別なルールがたくさんあり、それの全てを把握するのはなかなか大変なのですが、テレビで解説する立場としてそれは言い訳になりません。僕の失敗もそんなNFL特有のルールが原因でした。

 NFLでは1試合に3人までQBを登録できます(先発1人と控え2人)が、第3クオーターが終了する前に3番目に登録のQBが出場した場合には、第1、2QBはその試合に出場できなくなるというルールがあります。フットボールではラグビーやサッカーと違って選手の入れ替えが自由なのですが、NFLのQBに関してのみ交代に制限があります。

 5年程前に僕が担当した試合で、試合の前半に第3QBが登場するという場面がありました。「さあ、ここはNFLの『第3QBルール』を説明するチャンスだぞ」とばかりに僕は意気込んでこの特殊ルールを説明しました。「3番手QBが出てきてしまったので、最初の二人のQBはもう試合に出場できません」と。

 ところが!試合の後半に先発QB(第1QB)が再びフィールドに戻ってきてしまったのです。僕はもう大混乱です。「え?!なぜ?これってルール違反じゃん!」とは思うものの、試合はそのまま進んでいきます。仕方なく僕は「ルールを間違えていたみたいです。勉強し直してきます」と視聴者に謝ったのでした。放送後にはプロデューサーにも「勉強してきてくださいね」と(笑いながらでしたが)言われてしまう始末。これはかなり落ち込みました。

 第3QBルールそのものは僕の理解で正しかったのですが、適用の例外があることを僕は知りませんでした。このルールが適用されるのはチームが制限いっぱいの選手(47人)数をベンチ入りさせている場合のみで、何らかの理由で登録数がこれに満たない場合は適用されないのです。僕が担当した試合の出場チームは故障者が続出し、47名をベンチ登録できない状態だったので、このルールが適用されなかったのです。

 これ以外にもNFL特有のルールはたくさんあるのですが、今ではたいていのものは理解しているつもりです。それでも、予想もしないようなルールがあったりして、常にルールブックとにらめっこしているような有様です。

 放送で一番怖いのは放送禁止用語。みだらな言葉や差別を連想させるような言葉はご法度です。僕はさすがに経験がありませんが、解説者仲間ではうっかり差別用語を言ってしまって収録のやり直しをした人がいます。

 僕が出演しているNHKと日本テレビでは放送禁止用語の基準が少し異なります。たとえばこんなことがありました。

 NHKで収録した試合のことです。あるチームにポークマンという選手がいて、彼は名前が似ているということで「ポケモン」というニックネームで呼ばれていました。ご承知のとおり、ポケモンはアメリカでも大人気です。僕は試合中にこのエピソードを紹介しました。ところが、収録後にプロデューサーから「『ポケモン』は登録商標なのでNHKでは使えない」と言われてしまいました。放送時には僕のその部分の発言は音声が消されていました。後で日本テレビのプロデューサーに聞いたところ、日本テレビではこれはOKだそうです。

 これ以降はNHKで解説をするときは商品名などには気を付けるようにしています。ほかにも「ウィンドブレーカー」も登録商標なのでNHKでは言ってはいけないとのことでした。もっとも、解説者の発言に関しては大目に見るそうですが。

 生放送は僕たち放送の素人にとっては怖いものです。放送禁止用語はもちろんですが、試合の結果を知っているときにはうっかりとそれをにおわす発言をしてしまうことがあります(これもあって僕はできるだけ試合結果を知らずに放送に臨むようにしています)。数年前には放送のオープニングで、本来ならハーフタイム時に出すはずの前半の成績をうっかりと流してしまい、慌てたことがあるそうです。

 活字の世界で仕事をしている僕たちにはあまりなじみのない世界ですが、最近この生放送のスリルが楽しくなってきた自分がちょっと怖い今日このごろです。

次回予告:「知っていること」と「分かっていること」

 「知っていること」と「分かっていること」は似ているようでまったく違うものです。たとえば、昔の人は月明かりを頼りに夜道を歩いていたことを僕たちは「知って」います。でも、夜中でも電気の明かりが絶えない現代に暮らしている僕たちは、その月明かりがどんなに明るくてありがたいものなのかを「分かって」はいません。「知っていること」と「分かっていること」を混同することは実はとても怖いことなのです。

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