先日、久しぶりにある先輩と会う機会がありました。この先輩は、僕が駆け出しの新聞記者だったころに一から仕事を教えてくれた先輩で、個人的にも兄のように慕い、憧れている人です。この先輩は残念なことにジャパンタイムズの記者ではなく、現在はK通信社の支局の運動部長をされています。
彼も大学時代はアメリカンフットボールの選手で、現役時代は学生王座決定戦である甲子園ボウルでの優勝経験もあるスター選手でした。会えば必ずフットボールの話に花が咲きます。
先日お会いしたときもやはりフットボールの話になりました。今年は夏にアメフトのワールドカップが川崎で開催されるということもあり、日本フットボールの現状なども話題に上りました。
実は僕はこのところ、内勤が多いために国内フットボールの取材にでることがめっきり少なくなりました。90年代は毎週末のようにフットボールの会場に足を運び、取材をしたものでした。その取材先で、くだんの先輩(Sさんとしておきます)に会っていろいろと教えてもらうのが楽しみの一つでもありました。
ところが、最近は取材に出る機会がほとんどなく、昨年はついに国内フットボールの取材0という初めての経験をしてしまいました。
最近の僕にとってフットボールの仕事といえばどうしてもプロフットボールNFLに関連したものが多く、国内のフットボールには疎くなってしまっています。このことについてSさんから苦言を呈されたのです。
Sさんは「NFLもいいけど、国内のフットボールにももっと目を向けるべきだ。足元をしっかりと見なければいけないよ」と言ってくれたのでした。
この言葉は心にしみました。僕たちアメフト経験者は国内フットボールを大切にします。他社の記者でもアメフト経験者はたくさんいますが、彼らはほかに担当スポーツを持っていながらも時間を見つけては地道に国内フットボールを取材して記事を書き、このスポーツの人気向上に努めているのです。数年前までは僕もそうだったと胸を張って言えたでしょう。しかし、最近は国内フットボールをおろそかにしていたのは否定できません。
僕たちアメフト経験者にとって国内フットボールは原点であり、まさに足元なのかもしれません。特に僕は、学生時代にフットボールをしていなければ現在の仕事についていなかったかもしれませんし、ましてやテレビで試合を解説したり専門誌に寄稿することはなかったでしょう。
日本ではNFLを好んで観る人は、アメフト経験者でもない限り国内フットボールはあまり観ないという傾向があります。NFLのプレーレベルを見慣れている人には国内フットボールが物足りなく感じてしまうのは仕方のないことです。僕は、こういう人にも国内のフットボールを見てほしいと常々思っていました。ところが、気が付けば自分自身がそういう人たちと同じ立場になっていたのです。このことについては以前から残念に思っていました。S先輩の言葉はいみじくもその心理をついたものでした。
僕も新聞記者となって17年目を迎えます。年齢も40を過ぎ、いまさら先輩から苦言をもらうなどという経験は少なくなりました。だからこそ、Sさんからあえて言われた言葉が心にしみこんだのだと思います。持つべきはありがたい先輩だなと改めて思うとともに、もう一度原点に立ち戻る必要があるなと考えたひと時でした。
次回予告:インターン
新聞社には学生に社内で働く、つまり社会経験をさせる機会を与える制度があります。インターンというのがその一つです。次回はこのインターンという仕事をご紹介します。
|