前回に引き続き、新聞作りの工程をご紹介します。
前回は記事を作成し、そのレイアウトを決めるまでのプロセスをご紹介しました。記者の仕事はここまでです。記事作成が終わると、レイアウト機能の付いているコンピューターの画面上で組版を行ないます。
編集者はダミーシートと呼ばれる紙にレイアウトの詳細を記し、それを組版のスタッフに渡します。このダミーシートはいわば新聞の設計図です。その設計図を受けた組版スタッフがコンピューターで実際の紙面と同じものを組んでいくわけです。
ただ、この時点ではまだ記事の長さが確定していません。実際のレイアウトよりも記事が長かったり短かったりすることがあるからです。コンピューターの画面には、指定したレイアウトに比べて記事がどれくらいの行数オーバーなのか(または足りないのか)が示されます。その情報を元に編集者は記事の長さを調節するのです。
記事がレイアウトよりも長い場合は、終わりのほうから削除していくのが普通です。ですから新聞記事は、大切な情報ほど始めに書いてあり、後ろに行くほど補足説明が多くなる傾向があります。いわゆる「起承転結」の形にはなっていないのです。僕たち新聞記者もそれを意識して記事を書きます。
逆に記事が短い場合には、関連した内容に別の記事を付け足すことになります。必ずしも掲載する必要はないけれども、記事の長さの調節のために付け足す記事を「フィラー」と呼びます。
記事の調節が完了すれば紙面の出来上がりです。これを印刷所にまわすことになります。かつては、紙面が出来上がるとそこに記されている活字どおりに鉛版の文字を一つ一つ拾っていた時代がありました。このころには刷り上った新聞の文字がたまに逆さまだったりしたことがあったものです。さすがに今ではこのような手法を使っている新聞社は皆無でしょうが。
現在ではコンピューターの画面上で作られた紙面はボタン一つでフィルムに変換されます。そのフィルムが印刷所に送られていよいよ新聞の印刷となるのです。
新聞の印刷は輪転機と呼ばれる大きな印刷機で行なわれます。大人の体以上もあるような大きなローラーが組み合わさった輪転機はなかなか壮観です。そして、トイレットペーパーのお化けのような紙ロールにフィルムから転写していくのです。
ジャパンタイムズでは地下に印刷工場があり、僕たち記者もたまに印刷工程を見ることがあります。ものすごいスピードで紙が送られ、次々とページが印刷されていく過程は見ていて楽しいものです。機会があれば、ぜひ見学にいらしてください。
印刷の過程で難しいのはカラー写真の色調節です。写真そのものの色補正は組版の時点で行なうのですが、実際に刷り上った紙面上で予定通りに色がでているかどうかは印刷スタッフの微調整にかかっています。スポーツ面で使う写真では芝やユニフォームの色が鮮やかなものが紙面を彩ってくれます。これが実現できるのは組版スタッフの丁寧な色補正と印刷スタッフの熟練された微調整技術があってのものなのです。
刷り上った紙面はプレス機によって半分に折られ、さらに重ねられて皆さんがご存知の新聞の形になります。これで新聞という製品が出来上がりです。
さあ、新聞ができました。次はこの新聞という商品を販売するという作業が残っています。これはどのような工程を踏むのでしょうか。
次回予告:新聞作りの工程B 発送と販売
新聞作りの工程の最後は販売です。新聞の販売は食品や電化製品などとは違ったシステムを持っています。その一つが宅配です。新聞は皆さんのお宅に届けられるまでにどのようなプロセスをへるのでしょうか。次回は発送と販売の仕組みをご紹介します。
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