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記者ほど素敵な商売はない

By Hiroshi Ikezawa / 生沢 浩

ジャパンタイムズ運動部記者、アメリカンフットボールライター、TV解説者のさまざまな顔を持つ生沢浩が15年間の記者生活のなかで見聞きしたこと、思ったことなどを紹介するコラムです。
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Hiroshi Ikezawa / 生沢 浩

Vol. 57 : NFLドラフトに見る組織作り(前編)

 今、北米のスポーツ界はミッドシーズンを迎えたMLB、プレーオフが佳境に入ったNBA、NHLの話題で持ちきりです。そんな中、4月28〜29日にシーズンオフ中のNFLでドラフトが行なわれました。

 NFLのドラフトではだれがいの一番に指名されるか、各チームが第1巡でどのような選手を補強するのかが話題になります。僕もNFLの日本支部であるNFLジャパンの公式サイトにドラフト予想の記事を書きましたが、各チームのニーズを理解していても指名選手を予測するのは本当に難しいものです。

 NFLのドラフトは大学3年生以上が指名の対象となります。高校生の指名を禁じているところがMLBやNBAとは異なる点です。そして、NFLを含む北米のスポーツのドラフトには日本のドラフトにはないユニークなシステムがあります。それは、ドラフト指名権の交換です。

 NFLは前年度の成績によって指名順位が決定します。今年は昨年の成績が2勝14敗だったオークランド・レイダーズが1番指名権を持ち、スーパーボウルで優勝したインディアナポリス・コルツが最後の32番目に選手を指名します。指名される大学選手側にチームを選ぶ「逆指名」の権利はありません。このように、前年度の成績の悪かったチームから優先的に指名する権利を持ち、指名された選手が自動的にそのチームと交渉することになるシステムを「ウェーバー制」と呼びます。日本のプロ野球でも導入が検討されたことがあります。

 本来ならNFLの全32チームが1巡でそれぞれに指名を行なうはずですが、実際に1巡で選手を指名したのは30チームでした。サンフランシスコとクリーブランドがそれぞれ1巡で2回指名し、シアトルとフィラデルフィアは2巡まで選手を指名できませんでした。なぜこのようなことが起こるのでしょうか。

 詳しく説明すると難しくなるので、簡潔にシアトルのケースだけ説明しましょう。シアトルは昨年、ニューイングランドに在籍していたディオン・ブランチという有能な選手をトレードで獲得しました。日本のプロ野球ではトレードで交換条件となるのは選手または金銭です。NFLを始め、北米のスポーツでは人的または金銭での交換とは別にドラフト指名権をトレードの交換条件とすることができます。シアトルはブランチ選手を獲得するために、今年のドラフト1巡での指名権をニューイングランドにトレードで放出していたために、今年は2巡まで指名ができなかったのです。

 また、ドラフト指名権同士のトレードも可能です。ニューイングランドは今年の1巡指名権を二つ持っていましたが、そのうちの一つをサンフランシスコに譲って、代わりにサンフランシスコから今年の4巡指名権と来年の1巡指名権をもらいました。

 なぜドラフト指名権を交換するという現象が起きるのでしょうか。ここにはチームの状況に応じた補強計画とほかチームの動向をにらんだ駆け引きが存在します。実際の例を出して説明しましょう。

 クリーブランドは当初1巡では3番目の指名権を持っており、これを行使して今年のドラフト1番のOTと評判の選手を獲得しました。ところが、QBにもいい人材がほしいクリーブランドは、ブレイディ・クィンという選手を獲得したいと考えました。しかし、2巡まで待っているとほかのチームにクィンは指名されてしまいます。その前にクィンを獲得するにはどうしてもほかのチームの1巡指名権を譲渡してもらう必要があったのです。

 そこでクリーブランドはいろんなチームに電話をして交渉を持ちかけました。ほとんどのチームには断られてしまいましたが、ダラスだけはその交渉に応じました。クリーブランドはダラスに今年の4巡指名権と来年の1巡指名権を譲り、代わりにダラスの今年の1巡・22番目指名権を獲得したのでした。こうしてクリーブランドはクィンの指名に成功しました。一方のダラスは1巡指名権を失いましたが、4巡指名権は二つに増えました。そして、2、3、5巡指名権をフィラデルフィアにトレードしてフィラデルフィアの今年の1巡指名権をもらいました。こうすることでダラスは一度は失った1巡指名権を取り戻すことに成功したのです。

 1巡指名権を失った形のフィラデルフィアですが、ダラスから3つの指名権を譲り受けたために全体の指名数が増えました。フィラデルフィアは早いラウンドでいい選手を獲得するよりも、できるだけ多くの指名権を使って選手を複数獲得する道を選んだのです。これはフィラデルフィアが即戦力よりも、控え陣の充実に力を入れるという方針を持っていたからなのです。

 どうですか?NFLのドラフトにはいろんな駆け引きがあるでしょう。各チームはドラフト当日に作戦を練る部屋を与えられますが、それは「ウォールーム」と呼ばれます。限られた時間で指名する選手を決め、急なトレード交渉に対応する多忙ぶりはまさに「戦争」と評するにふさわしいものなのです。

 チームによって補強のやり方も千差万別です。次回はその補強プランについてお話しましょう。

次回予告:NFLドラフトに見る組織作り(後編)

 一言にドラフトによる補強といってもそのやり方はNFL32チームによって異なります。次回はその補強プランを紹介します。「NFLには興味ない」と言うなかれ。NFLの補強プランは会社や学校などあなたの所属する組織にも当てはまるのものなのです。

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