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記者ほど素敵な商売はない

By Hiroshi Ikezawa / 生沢 浩

ジャパンタイムズ運動部記者、アメリカンフットボールライター、TV解説者のさまざまな顔を持つ生沢浩が15年間の記者生活のなかで見聞きしたこと、思ったことなどを紹介するコラムです。
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Hiroshi Ikezawa / 生沢 浩

Vol. 58 : NFLドラフトに見る組織作り(後編)

 4月28〜29日にニューヨークで行なわれたNFLドラフトでは計250名の大学選手が指名を受けました。この全ての選手が9月のシーズン開幕時にチームに残れるわけではなく、一線で活躍できる選手となるとさらに少なくなります。これからの4ヵ月弱でし烈な競争が繰り広げられることになります。

 ドラフトはNFLに限らずスポーツチームでは重要な補強策の一つになります。しかし、その補強プランというのはチームによってまちまちで、ここにも球団の個性が現れます。

 通常はそのチームが必要としているポジションの選手、例えばフリーエージェントでほかのチームに移籍してしまった選手の代わりとなる選手をドラフトで指名するのが一般的です。NFLの場合、ヘッドコーチ(監督)はシーズンが終わるとチームの試合ビデオを全て見直し、補強が必要なポジションを分析します。そして、大学のオールスター戦やドラフト前の合同トライアウトなどを通じて大学選手の力量を測り、指名選手を決定します。

 アリゾナ・カーディナルズというチームは長い低迷を続けている弱小チームで、今年からヘッドコーチが代わりました。新ヘッドコーチは短い期間でチームの弱点を分析し、それに応じた詳細な補強リストを作成してドラフトに臨みました。これが功を奏したのか、カーディナルズは弱点をうまく克服したドラフトができたと思います。

 一方で、チームのニーズにかかわらず、とにかく運動能力の高い選手を指名する方針のチームもあります。今年のドラフトでは全体の2番目指名権を持っていたデトロイト・ライオンズは、大学選手で最も運動能力が高いとの評価を受けていたカルヴィン・ジョンソンという選手を指名しました。ジョンソンはレシーバーなのですが、実はライオンズにはすでに有能なレシーバーが複数いるのです。

 正確に言うと、過去4年間のドラフトでライオンズは毎年のようにレシーバーをトップ指名としてきました。ところが、大きな期待をかけられたこれらの選手たちは思うように育たず、活躍することができませんでした。業を煮やしたファンたちは選手起用の責任者であるGMマット・ミレンの辞任を求める運動まで起こしたのです。

 このミレンというのがチームのニーズよりも選手の能力の高さを優先して獲得を決めるというタイプの人なのです。そして、今年も補強が急がれるはずのポジションを後回しにして性懲りもなくレシーバーを指名したというわけです。

 「性懲りもなく」とネガティブな書き方をしましたが、ニーズよりも選手の能力を優先する補強策はあながち間違っているともいえません。NFLは32チームの戦力が拮抗しており、高い運動能力を持った選手が一人入るだけで戦力バランスが大きく変わることが現実に起こるからです。ただし、ミレンのやり方が正解だったかどうかは、今年のライオンズの成績を見るまでは分かりませんが。

 皆さんの職場や学校でも似たようなケースはあるのではないでしょうか。退職した人に代わる人材を獲得する、または、強化したい部署に能力の高い人材を配置するなど、補強にもいろんな形があります。欠けた部分を補うというのは補強の基本です。でも、弱点を補強するよりも長所を伸ばすという考え方もまた正しい結果を生むことがあるのです。

 勉強でもそうですね。苦手科目を克服して全ての教科で平均的にレベルアップすることが正しいという人もいれば、得意科目をさらに伸ばすことで苦手な分野を補う方が有効だと信じる人もいるでしょう。

 僕は学生時代は前者、つまり苦手なものを克服することが正しいと考えていました。しかし、社会に出てみると得意分野を伸ばすことも好結果を生むということに気付きました。現在僕はフットボールライターとして活動する場を与えられていますが、これは得意分野を伸ばしてきた結果です。新聞記者はオールラウンドの知識が必要な場合もあり(この場合は苦手を克服するのが正しいでしょう)、逆に専門知識が身を助けることもあります(こちらは得意分野を伸ばした結果です)。僕の場合どちらが正解なのか。これはこの仕事をやめるまで結論が出ないでしょうね、きっと。

次回予告:ステレオタイプの功罪

 ステレオタイプという言葉をご存知でしょうか。行動や考え方が型にはまりすぎてしまい、新鮮味がないことを指す言葉です。転じて、相手を型にはめて決め付けてしまうときにも使われます。例えば、お笑いのコントで「刑事」はトレンチコートにハンティング帽という装いで刑事らしさを表現しますね。トレンチコートとハンティング帽という服装が刑事のステレオタイプ、つまり一般的なイメージとなっているからです。文章を書くときにはこのステレオタイプを利用することがあります。これを利用することによって読者に具体的なイメージを与えることができるからです。ただし、これも使いようによっては良くもあり、悪くもあるものなのです。

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