「♪チャラチャッチャッチャラチャ〜 右から何かが来てる 僕はそれを左に受け流すぅ〜」とは、今ブレーク中のお笑いタレント、ムーディ勝山さんの持ちネタですね。ご存知ない方のために紹介すると、ムーディ勝山さんは白いタキシードに身を包み、ムード歌謡調で歌詞がナンセンスな歌を歌う若手お笑いタレントです。ムーディとはもちろんムード歌謡からきているネーミングです。
ところで、この「ムーディ」という言葉は本来の英語のmoodyとはちょっと違った意味で使われています。日本語で言う「ムーディ」は「いいムードの」という意味で使われますね。「歌って踊れるムーディな店」というバーの看板も見かけることがあります。
ところが、英語のmoodyはむしろネガティブな意味に使われる言葉なのです。「(気持ちに)むらっけがある」とか「陰気くさい」というのが本来のmoodyの意味です。いくら歌って踊れても、陰気くさい店には行きたくありませんよね。
このように、一見何気なく使われているカタカナ言葉の中には本来とまったく違う意味のものが少なくありません。
「ハートフル」という言葉もよく耳にします。言葉の使われ方から判断すると、「心が温まる」とか「心がこもっている」という意味のようです。ところが、英語には上記のような意味を持つ「ハートフル」という言葉はありません。日本語の意味を反映しながら英語らしいスペルをつづってみるとheartfulとかheart-fullとなりそうですが、こんな単語は英語には存在しません。音から近いものをあげるとhurtfulなのですが、これは「(感情を)傷つける」、「害をなす」という、まったく反対の意味になってしまいます。
「心が温まる」は英語ではheart-warmingといいます。「心が温まるような話」はheart-warming storyで、映画の宣伝文句によく使われます。これを、hurtful storyなどとしてしまうと、「あなたの心を傷つける話」となって宣伝どころではなくなってしまいます。
リバウンドという言葉があります。Reboundはバスケットボールでよく使われる言葉で、シュートはしたもののリングを通過しなかったボールを奪うことを言います。日本語でリバウンドといえば、せっかくダイエットに成功したもののつい油断して体重が元に戻ってしまったことを指します。しかし、このような使い方は英語ではしないようです。僕自身も一度ネイティブと話しているときに、リバウンドを「また太った」という意味で使ったことがありますが、話が通じませんでした。言葉の意味を説明したあと、そのネイティブは大爆笑。「そういう使い方も悪くないね」と言っていました。
ちなみに、dietという言葉は本来は「体重コントロール」の意味であって、日本語の「ダイエット」のように減量だけを意味するのではありませんのでご注意を。
そうそう、「セレブ」という言葉も気になりますね。セレブとはもともとcelebrityを省略した言葉です。本来のcelebrityは名士という意味合いが強く、経済状態はもとより、家柄や品格がすばらしいことを言います。ところが、日本語でセレブと呼ばれている人たちは、確かにお金持ちかもしれないけれど、品格という意味ではcelebrityと称していいのか疑問に思われる人が多いような気がします。誰とは言いませんけど(笑)。庶民のひがみでしょうか。まあ、右から左に受け流してください(笑)。
次回予告:言葉の省略に見る日本語と英語の違い
単語の意味ばかりではなく、言葉の省略に仕方にも日本語と英語では大きな違いが見られます。どんな違いがあるのでしょうか。
|