僕が住んでいる街は最近宅地造成ブームなのか、新しい住宅がたくさん建てられています。電柱にも看板がたくさん見られるようになりました。そのなかで、気になる文言がありました。それは、「防犯対策に強い」という宣伝文句です。
新しく建設した住宅は防犯設備が充実しているという意味だと思うのですが、この日本語、少し変じゃないですか?
「防犯」とは文字通り「犯罪を防ぐ」という意味です。「対策」は「物事に対応する方法」ですね。では、「防犯対策」は「犯罪を防ぐ」ことに「対応する方法」、つまり、「防犯を克服する方策」という意味になりませんか?意地悪な僕は、「防犯対策に強い」ってことは「腕のいい泥棒サンがいる家なのかな」と思ってしまいます。そんな家は誰も買いたくはありません。ここは「防犯策に強い」とするべきでしょう。
日本語は漢字を組み合わせることで新しい言葉を生み出すことのできる便利な言語です。「〜対策」や「〜的」などは組み合わせに使いやすい言葉ですが、使い方を誤ると上記のように反対の意味になってしまうことがあるので気を付けたいものです。
「最」は「最も」という意味ですが、「最も最近では」などと使う人もいます。これは「最も」が二重に使われている誤った例です。口語ではなんとなく許されてしまいますが、文章を書くときには避けなければいけない用法です。
口語でも気になる言葉があります。若い人に多いのですが、「違(ちが)くて」という言葉を最近よく耳にします。これもおかしいですね。「違う」という言葉は「違って」と活用変化するのが正しいのであって、「違くて」と変化するためには「違く」という言葉が存在しなければなりません。テレビに出ている芸能人がよく口にするので、自然に広まってしまったのでしょうか。中には「違くて」という言葉を堂々と歌詞に歌いこんでいるミュージシャンもいて困ってしまいます。
人をねぎらうときに「ご苦労様」とつい言いたくなりますが、この言葉も注意が必要です。ご苦労様という言葉は本来は目下の人に対して使うもので、目上の人に使うのは失礼とされているからです。目上の人には「お疲れ様」とするのが正しいようです。もっとも、「ねぎらう」という言葉自体が目下の人に対するものなので、「目上の人をねぎらう」ことそのものが成り立たないという説もあるとか。
「気に入る」、「感心する」などといった言葉も目上に人に使うのは失礼だとされます。ある本で、高級な料亭の女将(おかみ)が自分の出会ったマナーのすばらしい客に対する感想を「感じ入りました」と述べていました。これが目上の人に対する正しい言葉使いなのだと僕は思います。高級な料亭の女将は言葉遣いもきれいである必要があるのですね。
お笑いタレントのことを最近では「芸人」というようですが、この使い方も僕は嫌いです。辞書によれば「芸人」とは「俳優・落語家など、演芸を職業とする人」もしくは「芸のうまい人や多芸の人」という意味だそうです。大して芸もない若いお笑いタレントが自分のことを「芸人」と呼んでいるのを見ると「お前のギャグのどこが芸なんだよ」と突っ込みたくなってしまいます。
話術に長けていて、国宝級の評価を受けている落語家などはむしろ自分たちを芸人とは呼ばずに「噺家(はなしか)」と言います。歌手ならば「歌い手」です。こちらのほうが僕にはむしろ好感が持てます。
「芸人」と呼ぶほうがカッコいいのは理解できます。しかし、本当にそれだけで食べていけるほどの芸を持っている人がいったいどれほどいるでしょうか。それを考えると「芸人」などという言葉は簡単に使ってはいけないものだと思います。もっとも、たかが新聞記者のくせに「ジャーナリスト」を気取っている人にもへどが出ますけど。
次回予告:鉄人ファーヴのスゴさ
久しぶりにNFLの話題です。今年NFLで17年目を迎えるQBブレット・ファーヴという選手が数々の記録を打ち立てて話題を呼んでいます。この選手、いったいどこがスゴいのでしょうか。
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