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留学日記[高校編]

By Kana Ishiguro / 石黒 加奈

16歳で単身アメリカ留学。わからないことだらけのアメリカでの生活を振り返る石黒加奈の「ちょびつき」留学日記・高校編
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Kana Ishiguro / 石黒 加奈

Vol. 11 : なんちゃって『賢者の贈り物』

私の高校は、全寮制だったので、日ごろはほとんど寮で生活していましたが、感謝祭やクリスマスになると学校全体がお休みになってしまうので、どこかのお宅にお世話になる必要がありました。

私はルーム・メイトの家に行ったり、また別のお友だちの家に行くこともありましたが、長期のお休みはほとんどといっていいほど、学校のすぐそばに住んでいるホスト・ファミリーの家で過ごしました。

アメリカに親戚も知り合いもいなかった私は、日本のある留学エージェンシーの方に相談して学校やホスト・ファミリーを紹介してもらいました。

その紹介していただいたホスト・ファミリーというのがこれからお話しするマーラーさん一家だったのです。

マーラーさんの家はお父さんのデイビッドが銀行員、お母さんのジェインが100人を越える子どもをあずかる保育園の園長さん。そして、長女のエリザベス(べス)は大学生で、長男のウィリアム(ビル)は高校生でした。

猫を数匹飼っていて、ピアノまである素敵なお宅です。

ジェインは、昼間は忙しくお仕事をしても、夜は目の覚めるようなディナーを作ってくれます。

もっとも、家には、昼間はだれもいなくて、

"Help yourself."

(好きなものを食べていいよ〜)

と言われて何種類もあるハムから好きなものをとってサンドイッチにしたり、5人分もありそうなポテトチップスやポップコーンの袋を勝手に開いて食べたり、大学の寮にいるエリザベスの部屋の大きなベッドを借りて昼寝したり、これぞ「ぐーたら人生」天国のような暮らしができました。

でも、夜になると家族そろって食事をするので、また会話に困る石黒。お母さんのジェインとの会話はまさに驚異的。

What were you doing today?

(今日は、何をしていたの?)

I read, I wrote a few letters…

(本を読んだり、日本に手紙を書いたりしていました)

Oh, so you went into town, didn't you?

(あら、そう、町まで買い物に行ったのね?)

I was reading a Japanese book.

(読んでいた本は、日本語の本ですよ)

So what did you buy?

それで、何を買ったって?

I haven't finished reading it.

(まだ読み終わっていないんです)

こういう会話が延々と続いたこともしょっちゅうで、久しぶりに大学から戻ったベスは

"Mom, Kana's saying that she was reading a book!"

(ママ、加奈は本を読んだって言っているのよ)

と通訳してくれたりして。

"Don't pretend you understand each other."

(ママも加奈もお互いに分かっているフリをするのはもうやめなさいよ〜ぉ)

とベスに提案されて、そこでシュンとしたジェインと私は、

"I hereby swear to say I don't understand when I don't understand."

(分からないときは、分からないといいます)

と右手を上げて一緒に誓ったのでありました。

いよいよ、1年間で最もビッグなイベント、クリスマスがやってきて、私はアメリカで初めてのクリスマスをマーラー一家と過ごさせてもらうことになりました。

クリスマスと言えば、日本でも小さい頃はサンタさんにお願いしたのとはまったく違うプレゼント(本など)を両親からもらったりしましたが、アメリカでのプレゼント交換は、ほんとうに半端なものじゃありません。

暖炉のあるお部屋がひとつ、文字通りプレゼントで埋まってしまうという感じ。息子のビルは、毎年プレゼントを包む係りで、クリスマスの数日前は徹夜でその作業に追われています。

私はマーラー一家に何もプレゼントを用意していなかったのですが、ビルの様子を見てこれではマズイと思い、さっそく日本にいる母に連絡して珍しい日本の贈り物を用意してもらいました。

「もう、送ったよね?」

電話越しに母に聞く私。

「1週間も前に送ったわよ。まだ届かないの?」

こんな会話が繰り返されて、電話代はすごい額になっているのに、プレゼントは届かないままクリスマス当日に…。

正気の沙汰とは思えないほど早く起こされて、家族は暖炉の部屋に集合します。プレゼントをひとつずつ交換して(これはママからビルへとか、べスからパパへとかたくさんあります)、大きなリボンを解いて包装紙をビリビリやぶって開けます(紙がもったいないから、キレイに開ければ再利用できるよ、と言いたくなる感じ。でもケチケチしないところがポイントだそうで)。

セーターやネックレスとかだったら、まだ分かるのですが、そのうち歯ブラシとかパンツとかも出てきたりして、「1年分の買い物を一気にやったのか?」という散乱ぶり。

でも、みんな大喜びで、わたしなんかも「KANA」と金の文字で刺繍された大きな赤い靴下の中にプレゼントがたくさん入っているものをもらいました。

「なんだか悪いな〜。みんなには、プレゼントないし」

と困っていると

"Merry Xmas! This is from Japan."

(メリークリスマス、これは、日本からよ!)

と、家族4人全員がニコニコして大きな箱を最後に取り出してきてくれました。

よく見ると、『郵パック』とか書いてある…。「これを待っていたんだよ、あたしは!」と嬉し涙を流す代わりに、疲れが出てヘナヘナと座り込んでしまいました。

マーラー一家はこの日に私を喜ばせようと、何日も箱を隠していたそうです。

想いのすれ違いという点ではO. ヘンリーの『賢者の贈り物』と同じですが、流した涙の美しさはちょっと違っていたかも。

マーラー一家にプレゼントを渡せた私は、その晩たらふくクリスマス・ディナーを食べてめでたく安眠できたのでした。

つづく。

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