まだ、アメリカで生活を始めたばかりの頃。
週末や週明けの月曜日になると、寮の女の子たちが、
「もー」
とかいう言葉をしきりに連発しているということを察知していたのですが、「ちょびつき筆者」は、ある日ようやくこの「もー」の正体を掴みました。
「もー」= "Mall" は、アメリカのショッピング・モールのことです。
今でこそ日本でも、ひとつの大きなビルのなかに小さなお店がいっぱい集まっている「モール」があちこちに見られるようになりましたが、私が渡米した頃(1990年)には、日本にあるのはデパート(いわゆる百貨店)だけだったような気がします。
とにかくアメリカという国は広いので、どこへ行くにも車が必要です。それでも、アメリカ人は、よく何十分もかけて、このモールへ出かけていきます。おもしろいのが、田舎に行けばいくほど、モールが充実してくるということです。つまり、人口密度とモールの大きさは、反比例しているんです。
クリスマスや、家族、友だちの誕生日にはもちろん、ちょっと洋服を買いにいったり、映画を見たりと、モールはみんなに愛される娯楽の場です。
それにしても、このモールというのが、またすごいスケール。
「端から端まで歩いたら、半日ぐらいかかってしまうんじゃないの?」
というほどの大きさで、モール内の地図を見ながらじゃないと、目的地に辿りつけないという始末(私の場合は、地図を見るともっと辿りつけないんだけどね。「地図の読めない女」だから)。
ジョージ・スクールは全寮制の学校ですが、週末になると半分以上の学生が自宅に帰ってしまいます。しかし家が遠くて簡単には帰れないアメリカ人の生徒や、留学生など、寮に残された生徒のために、学校は毎週末、モール行きのバスをチャーターしてくれます。
時間はいつも決まっていて、スクール・バスやバンに乗ってモールへ行き、2〜3時間後にまた、迎えに来てもらうというシステムです。
私が留学したころは、"GAP"とか "J CREW" などのブランドが高校生の間でははやっていて、みんな似たようなTシャツを着たり、ジーンズをはいたりしていました。
ジーンズといっても、baggy(バギー)が好きな人や、flares(ラッパズボンのようなもの)が好きな人などいろいろで、ジーンズの裾をわざと切ってギザギザのままはいたり、メンズをはいている女の子もいました。
そこで、私もさっそくみんなの真似をして、モールでジーンズを買うことに!
"I'm gonna get a cool pair of jeans, like the one 〜 has got, you know."
「(足の長い)〜ちゃんと同じような、かっこいいジーンズをゲットしてくるね〜」
とルーム・メイトに告げて意気揚揚と出発した私。
あれこれ試して、買ったのですが、「松の廊下」か? と思うほど、裾が余ってしまったので、泣く泣く裾あげをしてもらいました。
帰りのバン中で、値札を取って準備し、寮に帰るなり、
"Hey, they are the jeans that I got today at the mall!"
(これが、今日モールで買ったジーンズだよ!)
とルーム・メイトに着て見せると、
"Nice, but they are just straight."
(いいじゃない、ストレートのジーンズを買ったのね?)
との反応!
がーん。
そのジーンズはストレートではなく、もともとは裾のほうが緩やかなカーブになって太くなっていたのに、裾あげしたときに、その部分がみごとにカットされてしまった結果、まるでストレートのジーンズのようになってしまったのでした。
けれども、ストレートじゃないのを買ったけど、諸事情によりストレートになってしまったのだ、と説明できない私は、コックリと悲しく頷くしかありませんでした。そして、あれからXXキロも太った今では、このオリジナル(?)ストレート・ジーンズさえも、入らなくなってしまいました(涙)。
それ以外にも、靴のサイズは21.5センチだと言うと、キッズのコーナーに連れていかれたり、モール内の美容院で、美容師さんの質問にいちいち、
"Yeah, sure."
(そうですね)
と相槌を打っていたら、史上最悪の髪型になってしまったりと、モールでは次々にハプニングが!?
でも本来出不精で、あちこちお店を見てまわるのがめんどくさい私にとっては、
「あんな便利で楽しい場所はなかなかないな〜ぁ」
と懐かしく思い出されます。 |