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未知の世界に飛び込んで、文化的背景の異なる人々と出会い、いつかその人たちのことを書いてみたい——。幼いころからそんな夢を抱いていた著者が、16歳で単身アメリカの高校へ留学。英語がほとんど通じず苦労したり、文化の違いにショックを受けつつも、さまざまな人に助けられながら卒業するまでの3年間をユーモラスにつづった青春記。

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留学日記[高校編]

By Kana Ishiguro / 石黒 加奈

16歳で単身アメリカ留学。わからないことだらけのアメリカでの生活を振り返る石黒加奈の「ちょびつき」留学日記・高校編
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Kana Ishiguro / 石黒 加奈

Vol. 21 : お父さんと弟の珍道中

アセンブリを終えてひと段落したころ、イギリスに出張していた父から急に、アメリカ経由で日本に帰ることにした、という連絡がありました。

自称「インターナショナル」の父は、自分では英語ができると思っているのですが、実際はかなり怪しいところがあり、無事に空港からジョージ・スクールに辿りつけるのかなと、「ちょびつき筆者」は自分の英語力を棚にあげて、気をもんでいました。

案の定、父は到着してすぐに、自分のラゲージが別の空港へ行ってしまったことに気づき、真っ青になりました。荷物がどこかへ行ってしまうなどというのは、アメリカだとよくあることなのですが、父が真っ青になったのにはそれ以上の理由がありました。こともあろうに、お金を含む貴重品のほとんどを、ラゲージの中に入れてしまっていたのです!

そのうえ、お財布にはほんの数ドルしか入っていなかったので、加奈の高校までタクシーで着けるかなあ? と、気が気ではなかったようです(父と私は、とても似ていて2人もとっても心配症)。

なんとかジョージ・スクールに辿りついた父は、私にタクシー代を払うように言うのがやっとで、久しぶりに会った感動どころではありません。フラフラと私のベッドに倒れこみ、そのままクークー寝てしまいました。時差ボケもあるので、ぐっすりです。

すると、とつぜん何かのベルがけたたましく鳴り響きました。
おろおろしているとホールの先生が来て、
What are you doing, Kana? Fire! Get outside right now. Oh, no! Who is this man!
(加奈さん、なにをやっているの! 火事よ! すぐ外へ出なさい! まあ、この男性は誰?!)
先生は、女子寮のベッドに男の人が寝ているからもうびっくり。高校では、オープン・ドーム(open dorm)と呼ばれる決められた時間以外は、女子も男子も他の寮に入ることはできません。そして、このときは、もちろん時間外。

It's my daddy!
(お父さんなんですよ、この人)
と私が言うと、先生の目は点。一連の騒ぎで目を覚ました父の目も、充血しているけど、点。
寝ぼけて
Hello, nice to meet you.
(はじめまして、先生)
とか言ってる。

私は、なんとか、jet lag (時差ボケ)という単語を思い出して事情を説明すると、先生はやっとこの異様な状況を理解して、これは火災訓練ですので、と言って
Please go back to sleep.
(どうぞ、また寝てください)
と笑ってドアを閉めて出ていかれました。

こんな事件から始まった父のステイは、終わりまで散々なものでした。町のホテルに泊まって、日ごろの感謝の気持ちを込めてホスト・ファミリーをホテルのディナーに招待したものの、例の行方不明のラゲージがまだ届かず、初日から「着たキリ雀」の半そで、短パンという格好で、ホテルのレストランではひとり浮いた格好をしていました。

結局ラゲージが届いたのは帰国の前日で、そのままカバンをろくに開きもせず、日本へ帰って行ったのでした。父が帰国した晩は、あまりの疲労で夕飯を食べずに寝込んでしまいました。

しかし、それ以上に、ホストの私が疲れたのは4歳年下の弟の訪問でした。

いくら父の英語が通じないと言っても、さすがに最低限のことは片言でなんとかなっていましたが、当時の弟ときたら、
「誰も勉強していないから」
が口ぐせで、英語の教科書なんて、学校の机の中に置きっぱなしで1度も家に持ってきたことなどなかったのです!

弟はサッカー少年で、ジョージ・スクールはサッカーが強かったので、姉貴と同じように留学して、サッカーをやりたいなどと考えていたようでした。弟の訪問中、高校のサッカーのコーチは弟に親切で、チームと一緒にプレイさせてくれたりしたので、弟は、上機嫌で日本に帰ることになりました。

なーんだ、弟さんは、問題なく日本に帰ったんだねって? ノンノンノン。

予想もしないことが、最終日に待ち受けていたのです。

アメリカ史のトム先生は、私の弟が来ているのを知って、弟を空港まで送ってあげよう、と親切に言ってくださいました。当日の朝、先生と私は1時間目の授業までに戻ってこられるように、とてつもなく早い時間に弟を車に乗せて、空港に向かいました。

しかし、空港に着いてみると、運が悪いことに、早朝の飛行機は台風のため欠航。こうなると、電車でフィラデルフィアからワシントンDCの空港まで行かなければなりません。英語のしゃべれない弟が果たして、ひとりでそんな長旅ができるか私は心配になりました。電車で行くとなると時間もギリギリです。

結局、「ダメだったら、夜、弟さんを、ワシントンまで車で迎えに行けばいいじゃないか」という先生のお言葉もあり、弟を電車に乗せました。

そして、その後、弟が飛行機に乗れたことを確認しようと、何度も航空会社に電話したのですが、まだ空港についてない、と言われるばかり。

ただでさえ難しい授業が、心配で、さらに分からなくなるくらいソワソワしながら、授業が終わるたびに、広い構内の片隅にある電話ボックスへ走っていって、電話をかけ続けました。

ここからは、後日聞いた話ですが、特急電車に乗った弟は、どこが指定席か、自由席か分からないので、ずっと立ったままワシントンへ行き、ワシントンの駅から空港まではタクシーを走らせたとのこと。

タクシーの運転手は、弟の特別な事情を知らなかったので、かなりゆっくり走っています。そのうえ、途中でガソリン・スタンドに寄ったり・・・。いよいよ時間が迫ってきて、焦る弟! なんで、こんなときにガス欠になるのじゃ〜と心の中で叫びながら、
「モア・スピード・プリーズ」
と必死に訴えて、ギリギリ・セーフで飛行機に乗れたそうです。

飛行機に乗ってほっとすると、疲れが一気に出たのでしょう。弟は、飛行機の中ではずっと爆睡していたため、機内食を食べそこねて、成田空港につくころは、腹ペコになってしまったそうです。

私は、father & brother の訪問を終えて、さすが「ちょびつき筆者」の家族だけあって、みんな「ちょびついている」なあと、実感したのでありました。

つづく。

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